【大阪・関西万博閉幕】ミャクミャク付録本に写真集……“万博ロス”に薦めたい関連書籍4選

“万博ロス”に薦めたい関連書籍4選

 2025年10月13日、184日間にわたって開催された大阪・関西万博が幕を閉じた。会場を包んでいた熱気が静まったいま、心にぽっかりと穴があいたような、いわゆる「万博ロス」を感じている人は多いのではないだろうか。SNSには「もう一度リングを歩きたい」「ミャクミャクに会いたい」「あの夜の光を忘れられない」といった声が絶えない。そこで、閉幕後になっても好調に推移している大阪・関西万博関連の書籍を紹介していきたい。

『大阪・関西万博 写真集』(ぴあ)

 まずは『大阪・関西万博 写真集』である。本書の表紙を飾るのは、公式キャラクターのミャクミャクだ。当初はその独特な姿で不評の声も大きかったミャクミャクだが、徐々に人気は拡大。グッズの売り上げは好調で、「ミャクけつ」というミャクミャクのお尻に注目をする動きもSNSでバズ。書店でもネット通販でも売上を牽引した。キャラクターの愛らしさと象徴性が購買層を広げ、家族連れや若い世代にも浸透したことは特筆に値する。

 写真集の内容は、開幕前から現場を追い続けたフォトグラファーたちによる祝祭のドキュメントである。朝の光に照らされる会場ゲート、リングに反射する夕焼け、夜空を彩る照明演出、子どもたちの歓声。どのページにも「いまここにしかなかった風景」が封じ込められている。中面でもミャクミャクは随所に登場する。来場者とハイタッチを交わす姿、子どもに抱きしめられて照れたように立つ瞬間、閉幕直前に観客を見送る表情――そのどれもが“人々の記憶の中のミャクミャク”を正確に再現している。

 SNSでは「泣ける写真が多い」「このポーズ自分も見た」といったコメントをはじめ、夕暮れのリングを背景にしたミャクミャクのシルエット写真は特に人気を集めている。後半には、閉幕前後の静かな記録が並ぶ。撤収作業が始まり、人影がまばらになった夢洲の風景や光の中に立つミャクミャクの背中には心を動かされるものがある。会場に足を運んだ人も、行けなかった人も、この一冊を開けば、あの熱気と喧騒、そして未来への希望が再び胸によみがえるだろう。

『2025年日本国際博覧会 大阪・関西万博 公式ガイドブック』(JTBパブリッシング)

 続いて紹介したいのが、JTBパブリッシングによる公式ガイドブック。会期中から売り切れが続き、来場者が最も手に取った一冊といわれる。全パビリオンの詳細解説、出展国リスト、アクセス情報、建築設計や展示の背景まで、万博の全体像を立体的に把握できる構成となっている。

 興味深いのは、閉幕後に読み返すことで、この本の真価がいっそう浮かび上がる点である。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、開幕前にはやや抽象的に感じられたかもしれない。だが、あの展示空間を体験したあとで再読すると、理念がどのように形を持ったかがはっきりと見えてくる。“行く前に読む”ためのガイド本から、“行ったあとに思い出す”ための復習書としても最適な一冊である。

『大阪・関西万博公式キャラクター ミャクミャク スマホポシェットBOOK』(宝島社)

 3冊目は、少しユーモラスな角度から万博を切り取る『ミャクミャク スマホポシェットBOOK』(宝島社)である。万博公式キャラクター・ミャクミャクをモチーフにしたスマホポシェットが付録のブランドムックだが、付録目当てだけの本ではない。誌面では、ミャクミャクの誕生背景やデザインコンセプト、SNSでの人気拡散の軌跡、キャラクタービジネスとしての展開までを詳しく紹介している。「不思議で、少し怖くて、でも愛おしい」という複雑な魅力を持つミャクミャクは、単なるマスコットを超え、万博全体の象徴へと成長した。スマホポシェットを手にすると、まるで自分も会場の一員に戻ったような気持ちになるだろう。

 閉幕後の現在も、SNSには「ポシェットを持って街を歩くと声をかけられる」「子どもが寝るときも離さない」といった投稿が相次いでいる。ミャクミャクが、人と人をつなぐ新しい記憶装置になったことを実感させる一冊である。

 これらの書籍を通して再確認できるのは、大阪・関西万博が単なるエンターテインメントではなく、「未来社会の実験」であったということだ。環境負荷を抑えた建材、再生可能エネルギーの活用、AIによる誘導や翻訳支援、バリアフリー設計の徹底――そのすべてが、実験的な社会モデルとして試された。1970年の大阪万博が「未来への驚き」を提示したのに対し、2025年の万博は「未来との共生」を体現した。それは、人と技術と自然がどう共に生きられるかという“問い”の場でもあった。

一方で見えてきた課題も

 大団円に閉幕を迎えた大阪・関西万博ではあったが、少なからぬ課題も存在した。開催前から注目を集めた『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)は、閉幕後に再び売上を伸ばしている。夢洲という人工島の地盤リスク、巨額の整備費、アクセスの脆弱性、政治的決定過程の不透明さ、同書はそうした影の部分を冷静に指摘した書籍だ。

 しかし、批判的視点は決して敵対的なものではない。むしろ、万博を支えた無数の努力と希望を現実の中でどう継承していくかを考える上で、必要不可欠な視点である。称賛と批判、その両方を受け止めてこそ、万博という巨大な社会実験の意味が立ち上がるのではないだろうか。

 

 

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