【漫画】人生の最後に好きな人と食卓を囲めないのはなぜ? 婚姻関係の裏にある複雑な感情を描く『一緒にごはんをたべるだけ』

一緒に料理を作って、たべるだけの関係――。たったそれだけのはずなのに、それ以上を描いた漫画が『一緒にごはんをたべるだけ』だ。
婚姻関係の外にある親密さを題材にした物語の第1話は、Xでも「自分ならどうするか」と読者の想像をかき立て、反響を呼んでいる。本作で作者・大町テラスさん(@te_rra_ce)が描きたかったテーマと“おいしさ”の裏にある人間の感情とは。(小池直也)
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――第1話、最後の幕切れに驚きました。
大町テラス(以下、大町):婚姻関係にあるパートナー以外との親密な感情……倫理的にどうかと思われがちな内容なので、人にすすめにくい漫画かもしれないと思います(笑)。
――Xに投稿されて印象的な反響はありました?
大町:この漫画をきっかけに“複雑な感情”について考えを深めてくれている人が多い気がしています。「自分ならどうするだろう」とか「許せる/許せないの境界って何だろう?」と、読後に少し考えたというような感想を多くいただいて、作品の狙いが届いている実感がありました。
――本作の着想について教えてください。
大町:好き同士で結婚したはずの夫婦が、日々の小さなズレを抱えながらも折り合って生きていく姿に興味があったんです。ただ、それだけだと地味すぎる。どうすれば多くの人に届く形にできるかを考えて、「今までに読んだことのないタイプの“不倫漫画”」を目指そうと、担当編集さんと相談しながら企画を進めました。
――具体的にどの点でそれを達成しようとしているのでしょう?
大町:主人公・タキの夫・カズは食事に興味がなく、あまり感想を言ってくれません。それ自体は、結婚関係を諦めるほどの理由にはならないかもしれない。けれど「一緒にごはんをつくってたべる」というだけの行為を通して、タキの仕事相手・レイとはすごい熱量で感情を受け、渡し合い、愛情や欲望のやりとりをしている。
カズが疎かにしていることの重みを、タキがレイから受け取っているものを描くことで表現できるのではないかと考えました。
――色っぽさの強調や性的な描写がないにも関わらず、調理シーンがとてもセクシーに感じました。作画で心がけたことは?
大町:直接的な表現をせずに、いかに「これはもうエッチでは!?」と思えるかを考え抜いて描いています(笑)。パートナーが自分以外の人とキスやセックスをしていたら当然嫌だけど、「一緒にごはんをたべるだけ」ならOKなのか? その“グレーゾーン”にこそ、人間関係のリアルがある気がします。
――そのグレーゾーンについて、もう少し詳しく聞きたいです。
大町:「パートナーが異性と食事をしたらそれだけで嫌」という人もいれば、「食事くらい別にいいじゃん」という人もいる。その境界線は“なにをするのがダメ”という行動の問題ではなく、“どこまで心が動いてしまうか”で変わると思うんです。だから本作では、性的な行為を描かずに「これはもう恋愛が始まってるのでは?」と思うような特別な空気を描くことに心血を注ぎました。
現実に自分のパートナーが他の人とこんな時間を過ごしていたら――。それを想像してゾッとするようなリアルさで描くことで、読者の中での「正しい」恋愛観が少しだけ揺れたらいいなと思っています。
――単行本の第3巻も10月8日に発売となりましたが、今のご心境はいかがですか。
大町:これまで少しずつ揺れ動いていた関係が、3巻ではついに決壊してしまいます。1巻、2巻でギリギリ抑えていたものがあふれ出すような展開なので、ぜひ未読の方もこの機会に1巻から一気に読んでいただけたら嬉しいです。
きれいじゃない恋愛なのに、なぜか他人ごととして切り離せないような――自分や誰かの感情を思い出してしまうような読後感になっているかと思います。
――今後の展望などがあったら教えてください。
まずは『一緒にごはんをたべるだけ』を全力で描き切ります!






















