第3回「黒猫ミステリー賞」受賞作・魚崎依知子『時計は二度凍らない』発売 成長が止まった少女のミステリー

黒猫ミステリー賞・『時計は二度凍らない』

 第3回「黒猫ミステリー賞」受賞作『時計は二度凍らない』が2025年9月16日(火)に産業編集センターより発売された。

 黒猫ミステリー賞は2021年に同社が創設した文学賞で、ジャンルや設定に縛られない広義のミステリー小説を対象として毎年募集している。今回刊行される『時計は二度凍らない』は、成長が止まったままの少女が因縁の事件に挑むという斬新な設定で描かれた〈氷解〉ミステリー。従来の本格推理の枠を超え、心理描写や人間ドラマを重視した構成が評価され、受賞に至った。

 作品の主人公は“時間が止まってしまった”少女。彼女が封じられた記憶や過去と向き合いながら、絡み合った謎を少しずつ解きほぐしていく姿が描かれる。単なる謎解きだけでなく、成長や喪失、再生といったテーマを内包しており、幅広い読者に訴えかける内容となっている。

 同賞はこれまでにも新たな才能を世に送り出してきたが、第3回受賞作となる本作は特に「次代のミステリーのあり方を提示する一冊」として注目を集めている。『時計は二度凍らない』は、読者に「時間」と「成長」という普遍的なテーマを投げかける一冊だ。従来の推理小説とは異なる手触りを持ち、物語性とミステリー性の両立を試みた作品として注目されるだろう。

あらすじ

親友が殺された事件のトラウマで、体の成長が止まってしまった志緒。それから4年、高校生になった志緒のもとに、親友の妹が何者かに連れ去られたとの知らせが届く。彼女の心のよりどころ、「トーマス」と慕う小児科医の戸増は、4年前の事件との共通点を示唆。現場に残された指紋からも、同一犯による反抗と見られ……志緒は友人たちとともに、事件の深部へと介入していく。過去と現在が交錯する〈氷解〉ミステリー。

■著者紹介
魚崎依知子(うおさきいちこ)
鳥取県出身・在住。既刊に『夫恋殺 つまごいごろし』(角川書店/第8回カクヨムWeb小説コンテスト特別賞)、『お宅の幽霊、成仏させます!―鳥取ハイブリッドADR事務所―』(今井出版/第3回小さな今井大賞優秀賞)がある。

■書誌情報
『時計は二度凍らない』
著者:魚崎依知子
価格:1,870円(税込)
発売日:2025年9月16日
出版社:株式会社産業編集センター

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