度肝を抜かれる天才詐欺師の“必勝法” アニメ化決定『LIAR GAME』デスゲーム系ギャンブル漫画の面白さ

アニメ化決定『LIAR GAME』の面白さ

 2007年からTVドラマや劇場版が制作され、社会現象クラスの大ヒットを記録した甲斐谷忍の漫画『LIAR GAME』。連載終了からおよそ10年を経て、同作がTVアニメ化されることが発表された。

 デスゲーム系のギャンブル漫画として今でも根強い人気を誇る作品だが、その魅力は一体どこにあるのだろうか。

『LIAR GAME』の異端すぎる魅力

 同作の物語は、女子大生・神崎直(ナオ)のもとに現金1億円が送られてくるところから始まる。その小包には「あなたは10万分の1の確率をくぐりぬけ、見事ライアーゲームトーナメントにエントリーされました」と書かれた手紙が入っており、謎の組織の思惑に巻き込まれていく。

 そこで繰り広げられるのは、数億円単位の大金をかけた闇のゲーム。敗北すると一般人には到底返済できないほどの負債を背負わされ、容赦のない取り立てが行われるという。

 いわゆる“デスゲームもの”の王道設定と言えるが、同作が面白いのは、誰でも理解できるシンプルなゲームを前提として、高度な読み合いや騙し合いが行われることだろう。たとえば1回戦のルールは、参加者に1億円が貸し付けられ、30日という制限時間内に対戦相手からマネーを奪うというもの。

 一見駆け引きが生じる余地のないゲームに思えるが、ナオは開始早々まんまと対戦相手に所持金すべてを奪われてしまう。そして天才詐欺師・アキヤマを頼り、一発逆転の秘策を授けてもらうのだった。

 続いて2回戦で行われるのは、イエス・ノーのアンケートで少数派になった側が勝ち残る少数決ゲーム。さらにロシアンルーレットやポーカー、イス取りゲームといったゲームも登場し、思いもよらない発想の“必勝法”が披露されていく。

 また、個性豊かな登場人物たちも同作の魅力だ。他人を無条件で信じる“バカ正直”な性格のナオと、クールな性格でずば抜けた心理戦の才能をもつアキヤマは凸凹コンビとして多くのファンに愛されている。

 ほかにも独裁者じみた支配力によってほかの参加者を手下にするヨコヤ、人間の心を掌握することに長けたカルト教団のトップ・ハリモトなど、クセの強い参加者たちが数多く揃っている。

 とはいえ同作はたんなるデスゲームものではなく、深いテーマ性に貫かれているのが特徴。それは「他人を信じることはできるのか」という問いかけだ。

人間不信を“本気”で乗り越えるストーリー

 ライアーゲームのルールは、基本的に騙し合いによってほかの参加者を出し抜くことで利益を得られるようにできている。そのため参加者たちは利己心に従い、良心の呵責もなく他人を蹴落とし、自分だけが儲かろうとするのだった。

 それに対してナオは、全員が団結し協力することこそが真の攻略法だと看破。本当の敵はライアーゲーム運営だと言い、「人とのつながり」を大切にして参加者同士で協力・団結することを訴える。その言葉が上辺だけの綺麗ごとではなく、“本気”であることは、実際に何億もの負債を背負いながら、敗退者たちの救済を行っていく姿からも明らかだろう。

 しかしいわゆる「囚人のジレンマ」という問題があるように、お互いに協力すればメリットを得られる場合でも、人間は他人を信じて行動することは難しい。当然ナオはライアーゲームに参加した当初、何度も“カモ”になってしまい、他の参加者からも笑いものにされていた。

 だがナオはたんに搾取される弱者ではなく、アキヤマの支えによって徐々に成長していく。しかも理想を捨てず、“他人を信じる”という姿勢を貫き続けるのだ。

 作中でアキヤマはナオに対して、他人を本当の意味で信じるためには疑うことが必要だと教える。疑わないのはたんなる無関心であり、「他人を知ることの放棄」だという。その助言を吸収したナオは、他人の本質を見抜いたうえで信じようとする“したたかな善人”へと変わるのだった。

 デスゲームものでは、「所詮人間なんて一皮むけば欲望の奴隷」という極端な冷笑主義(シニシズム)がよく描かれる。同作でもそうした思想の根深さはしっかりと描かれているが、安易に理想を放棄することもない。むしろナオとアキヤマは、“みんなで幸せになる”という理想を本気で実現するために奮闘していく。デスゲームものの主人公としてはあまりに異端だが、だからこそ大きな魅力があるのではないだろうか。

 TVアニメ『LIAR GAME』は、2026年に放送される予定。ナオとアキヤマの活躍がどんな風に描き出されるのか期待しつつ、続報を待ちたい。

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