【漫画】わだかまりのある同級生と再会できたら? 大正レトロの雰囲気漂う『珈琲ができるまで』

――自身のフォロワーからのアイデアをもとに制作されたとのことでしたが、反響はいかがでしたか。
木林ききき(以下、木林):描いている途中の絵もアップしていたのですが、色使いや世界観が好きと言ってくれる方がいて励みになりました。また、古本市のイベントに参加した際にお客さんに読んでもらったのですが、レトロ感のある絵柄が好評で。無関係なキーワードから着想しての制作を面白がってくれる方もいましたね。
――本作の着想について教えてください。
木林:定期的にイラストのテーマを募集しているんです。今回はそれの漫画版といった感じで複数のキーワードを募り、制作に至りました。あとは前々から夜汽車が登場する、落ち着いた雰囲気の漫画も描いてみたくて。だから「集まったお題を組み合わせたら、描きたかったものが作れるな」という予感が制作前からありましたね。
――お題は『同窓会』、『コーヒーができるまで』、『急な悪天候で電車に一晩車中泊』、『野球』、『時代劇』、『清算』だったかと思いますが、どのように考えていきましたか。
木林:さらに「列車に泊まる」という舞台設定も挙がっていたので、それと『時代劇』『野球』『コーヒー』の要素と矛盾がなさそうな大正あたりのストーリーに自然と決まりました。あとは『清算』と『同窓会』もあったので過去に同級生と何かあったのかな、と話を組んでいます。一気に最後まで話を作るのではなく1ページ描くごとに次の展開を考えてましたね。
――特に印象的だった要素は何でした?
木林:挙げてもらったキーワードの中では『コーヒーができるまで』が話の核となる要素なので、香りが漂ってきそうな画面づくりを心がけました。
大正時代の『野球』に関しては、ネット上の断片的な情報を拾い集めただけなので時代考証には自信がありませんが、昔のミットは現在とは違って分厚い革手袋だったらしいです。あれは面白い発見でした。
――制作時に大変だったこともあれば聞きたいです。
木林:登場人物の確執の原因ですかね。色々なシチュエーションを考えたのですが、あまり細かく設定すると話が長くなりすぎたり、いただいたキーワードの要素がぼやけたりしてしまう。要素の枠のなかで話を取捨選択するのに悩みました。
――宮沢賢治的な世界観も感じました。大正レトロがお好きというコメントもされていましたが、これについても教えてください。
木林:小さい頃から日本の蒸気機関車が渋くてカッコいいなと思っていました。和風なものが好きで、たまに和装を楽しんだりもします。大正時代の和洋折衷建築とか、街で見かける古い看板なんかはモダンなレタリング文字がたまらなくて思わず写真を撮ったり。あとはレトロ文房具や活版印刷のデザインなども好きで見かけたらつい手に取ってしまいますね。「銀河鉄道の夜」というインクも気に入っています。
――絵柄も素敵でしたが、意識していることなどはありますか?
木林:普段は可愛いポップなイラストを描くことが多いのですが、絵を描くときはアナログ感をなるべく残すこと、柔らかそうな曲線を描くこと、落ち着いた色彩を意識してます。なるべく親しみのある絵を心がけていますね。本作はアナログ感のある線を少し多めにして渋みのあるテイストを多めにしつつ、紺と黄色という少ない色数で光や影の表現に努めました。
――ところで、本業が牛農家なのですか?
木林:牛農家ですね。肉牛の方です。もともと祖父母がやっていたのですが、引き継いで今では自分ひとりで仕事を回しています。生きもの相手で基本的には休日がない仕事なので、だいたいは夜を制作する時間に充てています。牛の餌をやり終えた後など農作業の合間や、雨が続いてあまり仕事ができない時などにも描いています。気分転換にもなるので息抜きがてら楽しんでいますね。
――今後の展望、描きたい作品などがあれば最後にお願い致します。
木林:地方で暮らしており遠出がなかなかできない仕事なのでSNSが主に作品を見てもらえる場なのですが、今は近場で開催されるイベントやレンタル本棚など、実際に作品を手に取ってもらえる環境も増えてきました。ダイレクトに読み手さんと関われる場をこれからも見つけていけたら。
あとは親しみのある作風を大切にしつつ、地方特有のネタを盛り込んだようなローカル感あふれる作品や、自然の空気感を味わえるような作品など、自分が「描きたい!」と思ったものを思いつくままに表現していきたいですね。これからもマイペースにですが描き続けますので、見守っていただけると嬉しいです。






















