『NARUTO -ナルト- 疾風伝』Netflixのアニメ視聴数が一位に 圧倒的な海外人気の背景は?

2025年も折り返し地点を過ぎ、後半戦に突入して久しい。このタイミングで発表されているのが、さまざまなサービスの2025年上半期の集計である。動画配信サービス大手のNetflixの利用状況も集計が発表されているが、その結果が少々意外なことになっている。
アニメ作品に関する各種数値を集計・解説するニュースレター「Anime By The Numbers」によれば、2025年上半期において、Netflixの全ユーザーがアニメ作品を視聴した時間は44億時間に及ぶ。2024年下半期と比較して11.3%も増加しており、他のストリーミング配信サイトと比較してもおよそ10倍の増加率とのこと。アニメ作品の配信に関しては、Netflixでの配信が他を引き離して抜群に好調という状況である。
では、肝心のアニメ視聴回数のトップはどのタイトルなのかといえば、『Naruto: Shippuden』、つまり『NARUTO -ナルト- 疾風伝』である。続いて二位にスタジオジブリ関連作品、三位に『ポケモン』、四位が『名探偵コナン』で、五位が『ワンピース』という結果となっている。これだけ増加したNetflixのアニメ視聴者が一番見ている作品は、『NARUTO』の続編なのだ。
漫画『NARUTO -ナルト-』は、岸本斉史によって1999年から連載が開始された作品だ。その海外展開のタイミングは早く、連載開始から3年ほどが経過した2002年ごろからアジアやフランスでの翻訳版の発売を開始。2003年には小学館・集英社・小学館集英社プロダクションの関連企業であるVIZ Mediaから北米での英語版刊行を開始し、さらに2005年にはカートゥーンネットワークにてアニメ版の放送を開始。これがきっかけとなって北米での爆発的な知名度を得たとされている。
つまり『NARUTO』は2000年代以降大量に海外輸出された日本製コミック・アニメのさきがけであり、パイオニアとして絶対的な知名度を持つ作品と言っていい。海外進出から20年以上経過しており、子供の頃に本作に触れた年齢層の視聴者も今では30代前後になっていることから、すでにノスタルジーを感じるタイトルにもなっている。『NARUTO』は「展開開始から20年ほどが経過しており、皆が知っていてちょっと懐かしい」という、強力なタイトルに育っているのである。
ランキング二位以降の作品も、同じような特徴を持つタイトルであることがわかる。海外では知る人ぞ知る存在だったジブリ作品が大きな人気を得るようになった要因は、1996年のディズニーとの提携、そして2002年のベルリン国際映画祭で金熊賞、2003年の第75回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞したヒット作である『千と千尋の神隠し』の存在が大きい。これをきっかけに2000年代からはジブリ作品が海外で広く配給されることになり、マニア層意外にも一気に浸透するようになった。海外での認知が広がった時期は『NARUTO』とほぼ同じであり、こちらについても「知名度とノスタルジー」という強みを持っていることが伺える。

続く『ポケモン』や『名探偵コナン』、『ワンピース』も、海外展開のタイミングや知名度を得た時期は90年代後半から2000年代にかけてであり、『NARUTO』と同じ特徴があることが予測できる。タイトルによって人気のあるエリアには多少のばらつきがある(『コナン』は北東アジアやドイツでの人気が高いとされる)ため地域差はあるはずだが、全世界規模で集計した結果このランキングになったということだろう。「20年ほど前に新鮮なものとして海外で人気を得た日本製アニメ」は、現在第二の収穫期を迎えているのかもしれない。
興味深いのは、Netflixがプロデュースした限定配信の新作は一本もランクインしていない点だ。一時は日本アニメ業界を一変させるとも期待されていたNetflixオリジナルアニメだが、視聴回数については振るっていない。考えてみれば特定の配信サービス限定で見られるアニメには上位作品に共通する「知名度とノスタルジー」という要素が決定的に欠けており、再生回数が振るわないのも納得ではある。
人気作品には「人気があるから人気がある」というある種のトートロジーがつきものだ。今回発表されたNetflixのアニメ再生回数ランキングは、それをそのまま証明するものと言えるだろう。この状況をひっくり返すのは容易ではなく、おそらく20年前にアニメに触れ、今も頻繁に配信サービスを使う30〜40代のユーザーが一世代繰り上がらなければ、上位作品の顔ぶれは変化しないのではないだろうか。また、結局「知名度とノスタルジー」という強みが強力すぎることを前提とした時、営利企業であるNetflixがどれだけ新作アニメ制作に投資をし続けるのかもわからない。
しかしそれでもランキングには『鬼滅の刃』『進撃の巨人』といった上位層とは世代の異なる人気作もランクインしている。これらの作品によって、今後世代の移り変わりが実現するのか、次期のランキングも注視したい。
























