『姫様“拷問”の時間です』が発明したフォーマットとは? 読者に笑いと優しさをもたらした6年の連載大団円

アニメでの登場を期待したいキャラは
そうした日々のちょっとした幸せを、"拷問"というオーバーな用言を使って繰り出してくる漫画自体が、もはや姫様にとっての"拷問”と同じ効果を読者に与えた。連載早々に屈してしまった人たちの支持を得たり、2024年1月から3月まで放送されたTVアニメで存在を知って読み始めた人の新たな屈しを得たりして、『姫様"拷問"の時間です』は6年余りという長い期間、「ジャンプ+」誌上で輝きを放ち続けて来た。
それが終わってしまうのは寂しい限りだ。あの優しくて楽しくて温かい日々にもう屈することができないのかと思うと、心にポッカリと大きな穴が開いてしまうが、それを埋めてくれる朗報として、2026年1月からTVアニメの第2期の放送が始まることがある。いったいどのエピソードがアニメ化されるのかを想像するだけで、毎日が楽しくなってくる。
吸血鬼として名門のペシュツ家に生まれた上級拷問官のバニラちゃんが、家名を傷つけまいとして頑張ってはまだ幼くて実力が及ばず空回りする様子を、その時だけは少しだけお姉さんになる姫様が温かく見守って導こうとするところも実に愛らしい。第2期のティザーPVに登場したキツネ面を手に持つキャラクターで、暗殺者のサクラ・ロックハートが魔王国に来て何をするのかも楽しみどころだ。
「拷問232」と比較的最近のエピソードに登場した、動物園のコアラにアニメで登場して欲しい気もするが、そこまで一気にアニメ化が進むとは思えないだけに、第3期の制作を期待する方が今は良さそうだ。そこでは漫画の完結に向けて大きく進んだ魔王国と王国の関係が描かれ、捕らえられていた姫様の境遇に起こるとてつもない変化も描かれるだろう。姫様が屈するまでを手を替え品を替えて描き続けて来た『姫様"拷問"の時間です』が、それだけを永久に続けるギャグ漫画ではなく、背後に社会や世界の動きを持ったストーリー漫画であったことも、そこで改めて示される。
浮かぶのは、魔王の顔やアニメ版なら声も含めたその恐ろしげな雰囲気に似合わない聡明さだ。魔王軍の誰もが実は優しくて家庭的だといった設定には、ギャップから笑いを誘おうとしたところが確かにあるが、一方で、悪そうに見えるからといって悪いとは限らず、家族を思い平和を願って行動しているということも可能性とし感じさせてくれる。その集大成ともいえる成果を得て完結した漫画から、読者は誰にでも優しい気持ちでいよう、温かい気持ちで接しようと改めて思うのだ。























