アニメ『タコピーの原罪』は原作より絶望が深い? 終盤で追加されたアニオリ描写を考察

“その後の2人”が仄めかされるエピローグ
原作を補完するようなアニオリ描写は、最終話でも存分に活かされていた。たとえばすべての記憶を取り戻したタコピーがしずかと和解し、しばしのあいだ2人きりで旅に出る場面。原作では数コマだったその旅路が、アニメでは挿入歌つきで丁寧に描かれている。
また、空腹に陥ったしずかが東京行き計画のノートを開き、「本当に困ったときに使うこと!!」と記されたページに貼り付けられた500円玉で食パンを買い、タコピーと2人で食べるという場面も登場。おそらくこの小銭は直樹が万が一の時に備えて用意しておいたものだろう。最後まで3人のあいだに絆があったことを感じられる名シーンだ。
さらに物語の締めくくりとなるエピローグの部分にも、ちょっとした改変が加えられている。
しずかとまりなはタコピーがいなくなった後の世界で和解し、高校生になっても一緒に過ごしている様子。放課後に軽口を交わしながら買い物を行う姿が映し出されるのだが、アニメではまりながしずかに“足払い”をかけようとする描写が追加されていた。
そこでしずかはこなれた雰囲気でまりなの攻撃を避け、マイペースに会話を続けてみせる。いかにも距離感の近い友達同士といった空気で、2人の関係性が小学生の頃から一変していることが伝わってくる。
なお“アニメならでは”の表現といえば、声優陣の演技も原作ファンから絶賛されている。とくに上田麗奈演じるしずかの演技は幅が広く、感情を感じさせない普段の声、高校生になって直樹を誘惑するときの声、そしてタコピーに「どうすればよかったの?」と激情をぶつけるときの声などを、圧倒的な迫力で演じ分けていた。
またタコピー役の間宮くるみも功労者の1人。人間とは心の作りが違う異星人でありながら、それでも人間に寄り添おうとするタコピーの必死な姿には、多くの人が涙を誘われたのではないだろうか。
すぐれた演出と声優陣の演技によって、原作のポテンシャルを最大限引き出した『タコピーの原罪』。もっとも幸福なアニメ化の例として、語り継がれることになりそうだ。






















