アニメ『タコピーの原罪』は原作より絶望が深い? 終盤で追加されたアニオリ描写を考察

『タコピーの原罪』原作よりも絶望が深い?

※本稿は『タコピーの原罪』のネタバレを含みます。

 タイザン5の大ヒット漫画を原作とするアニメ『タコピーの原罪』の最終回が、8月2日に配信開始。その衝撃的な展開は大きな話題を呼び、国内のみならず海外のアニメファンたちも熱狂の渦に巻き込まれている。

 同作が未曽有の成功を収めた理由としては、原作の内容を上手く補完する形でアニオリシーンを追加していたことが挙げられる。今回はとくに終盤の展開に注目して、原作との違いを紹介していきたい。

 アニメ版『タコピーの原罪』は、原作とほとんど変わらないストーリーを描いているものの、省略されていた部分をしっかりと“肉付け”することで、より感情を大きく揺さぶる作品へと仕上がっている。

 そのことがよくわかるのが、第5話。あらすじを簡単にまとめておくと、雲母坂まりなの遺体が発見されて警察沙汰になるなか、東直樹は兄の潤也と和解し、自分の罪を告白する。そこで久世しずかは直樹抜きで「愛犬のチャッピーに会うため、東京にいる父親のもとに向かう」という計画を実行に移すのだった。

 しずかとタコピーの東京行きは原作ではほとんど描写がなく、青函連絡船に乗るところが1ページ分描かれているだけだった。しかしアニメではしずかが母親の寝ている部屋からこっそり抜け出す場面から始まり、函館からフェリーに乗って本州に移動し、東北新幹線で東京まで行った後、父親の住んでいる家にたどり着くまでがテンポよく映し出されている。さらに移動中にはしずかが都会の風景に目を輝かせる姿や、大型犬と遊んでいる家族にじっと視線を向ける姿なども描かれていた。

 一連のアニオリ描写が加わることで、「もうすぐチャッピーや父親に会える」というしずかの高揚感がより強く表現されている印象。そしてそれによって、父親の家で現実に直面したあとの絶望感が際立っている。

 さらに“1周目”のタコピーがまりなと過ごした日々の回想シーンでも、絶望を強調する演出が見られた。高校生になったまりなは直樹と付き合い始め、母親との関係も良好になりかけるが、しずかが突然地元に戻ってきたことで事態は一変。直樹をしずかに奪われ、母親と刃傷沙汰を演じることになる……という場面だ。

 アニメではしずかが直樹と甘酸っぱい会話を交わしている光景と、まりなと母親の修羅場が丁寧に描かれているが、この場面は原作ではたった2ページのダイジェスト的な描写。セリフも一切存在しなかったため、印象が大きく変わっている。

 とくに和やかに笑顔を浮かべていたまりなの母親が逆上し、食器をなぎ倒しながら恨み節を述べるところは圧巻のリアリティだ。さらにしずかが直樹の手にそっと触れ、怪しい笑みを浮かべながら「ほかのだれかと比べなくてもいい、東くんのことは私が見てるよ」と囁く姿は、“魔性”のイメージを引き立てるものとなっている。

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