「やる気」必要なし! 仕事も勉強も“すぐやる”方法が身に付く! 話題書『すぐやる人の頭の使い方』を読む

仕事の面倒な資料づくり、受験勉強や英検の勉強、部屋の掃除やダイエットなんかも、そうだ。
「モチベーションがあがらない」
「どうも調子がのってこない」
なんて“やる気”を言い訳にして、やるべきタスクに手をつけられない人は多いだろう。
■すぐにできるようになるシンプルな方法
しかし、『すぐやる人の頭の使い方』の著者・鈴木進介氏は、「やる気なんてないのが当たり前」「やる気に頼るのは神頼みと同じ」と言い切る。そして同書で、やる気や努力が微塵もなくとも、何でも素早くとりかかれる人に変わるための、43の方法を伝授してくれる。
基本メソッドはシンプルだ。
まずは、目標設定や計画などを考えず「小さな一歩目」を見つけよ! と指摘する。
たとえば、仕事の資料をつくるとしたならば「パワポを立ち上げる」、ダイエットのためランニングをはじめたいならまずは「ウェアを着てみる」といった感じ。
ごくごく小さな最初の1歩目を踏み出すと、無かったはずの「やる気」がほのかに立ち上がる。自然と作業の手が続き始めるというのだ。
心理学ではこれを「作業興奮」と呼ぶ。人は手を動かすと脳が勝手に活性化し、意欲や快楽をもたらす脳内物質のドーパミンを発生させるのだという。
本当だろうか?
まずその1歩目を探すのが、難しいのでは?
なんて、いぶかしがる読者を想定して、日頃から「頭の中を整理してシンプルにしておくことが大事だ」と指南。本書では小さな一歩を見つけるための思考法から解説してくれるので、ていねいかつ優しい。
■いますぐできるシンプルなテクニックの数々
著者の鈴木氏は人材育成トレーナーとして、これまで100社・3万人以上に「思考の整理術」という独自の仕事術を教えてきた人。それは難しい問題を優しく解きほぐすことで、誰しもが持っている可能性を最大限に引き出すというものだ。
そんな思考の整理術に基づいた行動法なので、本書で紹介するテクニックの数々は、どれもきわめて平易でシンプル。誰でも簡単に実践できるノウハウになっている。
たとえば、新年や新年度に目標を立てる人は多いだろう。このときに「目標とセットで最初の行動まで決めておけ」と著者は言う。
「10キロ痩せる!」と目標を決めて終わるのではなく、「ダイエットのための運動を毎日するため、トレーニングシューズを買う」とスケジュール帳などに書き出す。「売上・利益を去年より120%アップさせる!」だけではなく、「そのために朝15分だけ早く出社する」といった具合だ。
具体的かつ小さなものであればあるほど、当然、行動につながりやすい。裏を返せば、ただ大きな目標を掲げても、行動に移さなければ意味がない。小さく小さく切り分けてでも、確実に一歩、行動するための工夫を取り入れることが、“すぐやる人”になるためのシンプルな思考法なのだ。
他にも「たたき台」「ラフ案」「仮」といった言葉を多用せよ、と薦めているのがおもしろい。
すぐに行動できずグズグズしがちな人は「完璧主義」の傾向がある。「きちんと仕事をしなければ」「ちゃんとしたアウトプットを出さないと評価が下がる」などと思い込みがちになる。結果、不安が募り準備ばかりで、行動に踏み出せなくなる。
そこで便利なのが、企画書でも提案書でも、論文でいいが、提出する際に「たたき台ですが…」「まだラフ案なのですが」「仮ですが、見てもらえますか?」と最初に伝える。「まだまだ完成品じゃない」「俺の実力はこんなものじゃない」を暗に伝えることで、提出のハードルをぐっと下げられる。いらぬ完璧主義を自ら捨てるメソッドだ。
考えてみたら、受け取る側にしてみると、ラフだろうが、たたき台だろうが、早めに提出してくれたほうが助かる。成果物の方向性などが間違っていても、仮のうちに修正できる。結果として、完成度の高い成果物につながりやすいからだ。双方にとってハッピーなすぐやる技術といえるだろう。
「3秒アクション」もオススメだ。
職場で同僚から質問されたとき。経費精算や請求書提出の依頼があったとき。ランチや飲み会の誘い――。
こうした場面に出くわしたとき、「あとでいいや」と後回しにして返事や作業を遅らせたがるのが人情だ。しかし、その「あと」になったとき、むしろ他のやるべきことと重なり、億劫さが倍増していることは多い。
そこで、自分のなか「3秒以内に手をつける」とルールづけをしてしまうのだ。
同僚からの質問には「3秒以内に応える」。経費精算や請求書提出は「言われたそばから処理、提出する」。ランチや飲み会は「3秒以内に店と日程を仮決めしてオンライン予約する」。
こうした3秒で返すことを繰り返すうちに、すぐやる思考が癖になる。また、頭の中に「あれをやらなきゃ」「これしなきゃ」といったモヤモヤが残らないので、思考も整理され、仕事も早くなる。
すぐやるためのシンプルなテクニックがずらりと続く本書は、ポップなイラストも満載で、どこまでも視覚的に理解できるので、ハードルを低くしているのもすばらしい。
本書に掲載された43あるテクニックを、まずはひとつだけ選んでやってみる。どこからはじめてもすぐできるので、好きなところからスタートしてみてはいかがだろう。























