『運命の巻戻士』アニメ化で大ヒットなるか? 純度100%の王道を「コロコロ」に落とし込んだ“ジャンプ級”衝撃作

『運命の巻戻士』アニメ化で大ヒットなるか

『鬼滅の刃』にも通づる明快な対立軸

 クロノがなぜ巻戻士になったのか。序盤で彼自身の過去が描かれるのだが、そこにあるのは、あまりにも厳しく、そして美しい兄妹の絆。最愛の妹を救えなかったという現実が彼の根幹を構成し、それゆえに彼は一切諦めないし、失敗から学び、何度でも立ち上がることができる。

 これはまさに『ONE PIECE』のような、“純度100%の王道”である。シンプルで感情移入しやすく、それでいて深く、重く、熱い。「ジャンプ」に載っていてもおかしくない、むしろ本来「ジャンプ」でこそやるべき王道展開を、あえてコロコロが引き受けてしまった。それは「ジャンプがジャンプらしさで敗北した瞬間」でもあるようにすら思えてしまう。

 しかもこの作品は、コロコロ読者というある種「未来のオタク予備軍」に対して、最初に読むSFバトル作品として最高の入り口を提示している。リトライアイ、時空警察という設定、敵組織「クロックハンズ」には『鬼滅の刃』の「十二鬼月」にも似た12人の強キャラがおり、対立軸も明快でイメージが湧きやすい。

 子ども向けな“めちゃくちゃな展開”も入れつつ、物語としては大人が見ても面白いという完成度の高さ。本作が今の子どもたちのSFや能力バトルの基準になってしまうと思うと、末恐ろしい感じすらしてしまうが、これほどのエンタメ体験を今の子どもたちが最初に味わうのだとしたら、それはとてつもない財産になるだろう。

 アニメをきっかけに、この作品が爆発的なブームとなることは、時間の問題にも思える。クロノならきっと救ってくれる。どんなに辛くても、最後には絶対に笑顔になれると信じられる。この「安心感を前提にしたハードさ」こそが、今までのどのループ漫画にもなかった最大の魅力だろう。

 「コロコロ」という器に“王道ジャンプ魂”を詰め込んだ『運命の巻戻士』は、まさに名作。作品に触れれば、幸せな時を刻んでくれることは間違いない。

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