【漫画】鉤爪、鍵盤、蛸の足……義手にするなら? サイレントの演出が切ない読切漫画『探し手』

前半のセリフがなかったワケ
――『探し手』を制作した背景を教えてください。
篠茶:背景を細かく描く練習、さらには絵で物事を伝えきるための勉強として描きました。そのため、前半部分はセリフを入れませんでしたが、後半部分ではここまで見せてきたもののおさらいも兼ねて、言葉を使って説明を入れています。
――だから前半にセリフがなかったのですね。
篠茶:はい。また、SNS上で私の作品を読んでくれる外国の方も多く、「日本語でセリフを書きすぎると翻訳を使わないと読めず、テンポが悪くなるな」と考え、思い切ってセリフ無しにしました。「セリフを無くすことで読む際のエネルギーを減らしつつ、世界観にゆっくり入っていけるのでは」という狙いもあります。他にも、セリフでは伝えきれないことも多く、アリサの表情や握手で感情や信頼を表現している様子など作画からいろいろ感じてほしかったので……。
——セリフがないからこそいろいろな工夫がされているのですね。
篠茶:また、絵の世界観を丸くして作画の癖を強め、さらには背景密度に緩急をつけることで、文字がなくてもストーリー自体が前に進んでいるように感じてもらえるように工夫しました。
――「手を探すウェイトレスロボットの女の子の物語」という世界観は、どこから着想を得たのですか?
篠茶:「コレ!」といった感じのものはなく、以前に「人型のロボットが人と一緒に仕事をするようになったが、仕事がよくできることを逆恨みされて壊されてしまう」といった内容の物語を描いたことがあり、それを違う切り口で描きました。
――「アリサがいろいろな利用者のもとを訪れる」というストーリーでしたね。
篠茶:言葉表現を使わずに感情を表現する方法を考えた際、「手を繋ぐ」ということを思い付きました。そして、もっとわかりやすく物語のテーマを提示するために「手を探す」になりました。また、「最後の手を繋ぐシーン」と「前半の手選びの際に海賊の妄想をするシーン」が最初に思い浮かんだので、そこに繋がるように他の要素を加えていきました。
役に立たないアームたち
――アリサはどのようにデザインしていきましたか?
篠茶:可愛らしさを感じてもらえるように意識しました。また、セリフがないので、悩んだ顔を浮かべた時に憂鬱そうな感じであっても、不機嫌には見えないように描いています。
――「カスタムアームコーナー」で展示されていたアームのデザインもバラエティに富んでいましたね。
篠茶:いっぱいあるけど、どれも日常的には使いにくい“ただのアクセサリー”なんでしょう。便利そうに見えないようにデザインしました。実際に使うのであれば、何人もロボットを持っている人や、腕が多いロボット、ごく少数の大道芸をしているロボットなどに向けたもので、アリサも早々にその不便さに気付き、落胆しています。
――また、全体的に可愛らしいポップな作画でしたが、改めて作画で意識していることは?
篠茶:自分の普段の作画は線が太く、観る人を選ぶと思います。これまで持ち込みをした際にも、作画や演出、コマ割りなどが古いとずっと指摘されていて、「それなら今回は速度感がかなり遅い漫画なので、少し古風に、コマ割りなどもできるだけ単調にしよう」と意識しました。
――今後はどういった作品を作っていきたいですか?
篠茶:今の自分が作りたい作品は、好きな人だけが好んで読んでくれるような状態です。現在、イラスト系やデザイン系の仕事を主軸に取り組んでいるのですが、「その傍らで読切を描くくらいがちょうどいいのかな」と思っていたりもしています。
「連載作家になること」を目標にしていますが、「どの媒体が今の自分と相性が良くて、どこでならもっと生かせるのか」がわからない状況です。自由に描ける場所を作ったり探したりするために、漫画も漫画以外のことも頑張ってみようと思っています。
























