【漫画】田舎の不良少年、みんなに迷惑をかけるのはなぜ? 息苦しい青春を描く『グリンメロングリーン』

――多くのいいねが集まっていますが、ご自身としてはいかがですか?
小川しらす(以下、小川):多くの人に読んでいただけて嬉しいです。要因は主人公・りゅうしんのような、いわゆる不良は漫画のキャラクターとして、とっつきやすいからだと思います。あとは1ページ目のりゅうしんの発言「しねっ クソイナカ!」のインパクトが目を引いたのかなと思っています。
――本作の着想について教えてください。なぜ田舎の少年を主人公にしたのでしょう。
小川:子どもの頃に感じた田舎の息苦しさと、中学生時代の自分とは真逆のりゅうしんみたいな子を描いてみたかったからです。
また舞台である田舎・溝川(どぶがわ)は自分の生まれ育った土地をモデルにしました。何もないところで、田んぼや畑はありましたが手入れされておらず、「自然豊か」というよりも鬱蒼。流れる川は汚れた緑色、外を歩けば顔見知りがいてひとりになれない……。
度々、自分はどこにも行けないのではないかという悲しい気持ちになりました。最近の田舎の子どもたちはスマホやSNSの影響で他人との差を感じてより強い閉塞感があるのではと思います。
――主人公の家庭事情、同級生との関係がリアルで切なさを感じました。こういう設定はどこから?
小川:りゅうしんの人物設定は中学校の頃、実際にいた男の子をモデルにしています。私は彼のことが本当に嫌いでした。髪は変な色だし、制服は注意されそうな着こなし。友達や先生と楽しく喋っているのに急に入ってきて輪を乱してきたりする。
物に当たったり、大きな声で圧をかけてきたりで話が通じない。「かまってほしいからってそんな目立ち方するのか? バカだから話が通じないんだろう」と決めつけて、関わらないようにしていました。
――なるほど。
小川:ある日、その男の子と同じ小学校の人から「あいつは小学校6年間のうちに苗字が3回も変わっているんだぜ」と聞きました。そういう人もいるのか、と。私と彼は育った環境が違いすぎたのです。それは簡単にはわかり合えません。常識も感覚も違うに決まっています。
今までずっと彼のことが忘れられないでいましたが、彼のような少年を描けば少しは理解できるのかもと思ったのです。
――エンディングについても教えてください。
小川:りゅうしんは自分の心に正直に清瀬の手を取り自分の力で一歩踏み出しました。自分としては爽やかで希望が覗くエンディングとして描いています。
――作画でこだわっていることは何でしょう?
小川:基本的に原稿用紙は画用紙を使い、人物は先端を削った割り箸にインクをつけて描いています。ミリペン、つけペンよりも思い通りの線が引けないので、キャラクターの心情表現に人間らしさが出るんですよ。アナログ作画でしか出すことのできないかすれや不安定な線を大事にしています。
本作の場合はエコパルプ画用紙を使用し、割り箸に少しだけインクをつけて擦ることでグレーの色も入れてみました。これはちょっと大変すぎたので今後は取り入れないと思いますが……。どこにもないような面白い効果になったと思います。
――キャラデザインは?
小川:りゅうしんのデザインは今どきの若者のイメージ。髪型は駅で見かけた男の子の髪型そのままです。
――初の単行本『あみかはポテトになりたかった 小川しらす作品集』が発売となりました。読みどころは?

小川:こちらは読切4作品を収録した作品集で、それぞれさみしさと悲しみを抱えている少年少女たちの出会いの物語です。A5サイズと少し大きめなので隅々まで楽しんでいただけると思いますし、全作品がアナログ作画なので紙で読むと質感がわかりやすいと思います。
ブックデザインもメインタイトルである『あみかはポテトになりたかった』の要素を取り入れた面白い物になっています。良い本が出来ました。お手に取っていただけると嬉しいです。
――今後の展望を最後にお願いします。
小川:さまざまな画材を使って自分の中の漫画表現の幅を広げていきたいと考えています。Gペンなど、あまり使ったことのないものもそうですし、作業効率なども考慮してデジタル作画も少し取り入れていけたらと思います。
カラーイラストの方も積極的に取り組んでいきたいです。今後も頑張ります。よろしくお願いします!






















