「サンデー」復権の足がかりになるか? 『写らナイんです』『シテの花』……「次にくるマンガ大賞2025」注目作品を解説

「次にくるマンガ大賞2025」注目作品を解説

 ニコニコとダ・ヴィンチが実施して一般の読者による投票で決まる漫画のアワード「次にくるマンガ大賞2025」が7月7日午前11時まで投票を受付中。刊行されてるコミックス部門で40作品、Webマンガ部門で60作品がノミネートされて、自分が面白いと思った作品を推す人たちの1票を求めている。すでに話題の作品もあれば意外な掘り出しものと言えそうな作品もあって、今から結果に注目が集まる。

「週刊少年サンデー」は低部数でもファン人気はうなぎのぼり?

 コミックス部門のトピックは、「週刊少年サンデー」 の連載作品が幾つも入ったことだ。コノシマルカの『写らナイんです』や箭坪幹作画、牧彰久原作の『廻天のアルバス』、田辺イエロウ『界変の魔法使い』、壱原ちぐさ『シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-』(宝生流二十代宗家・宝生和英監修)、藤田和日郎『シルバーマウンテン』、福地翼『パラショッパーズ』、水口尚樹作画、一色美穂原作『みずぽろ』、晴川シンタ『百瀬アキラの初恋破綻中。』といった作品がノミネートされている。

 藤田の『シルバーマウンテン』は、5月7日発売の2025年第23号から連載が始まったばかりで展開もよく見えなかった中でのノミネート。同時に連載が始まった、同じ大ベテランの島本和彦による『ヴァンパイドル滾』はノミネートされておらず、当人にとっては悔しい事態だろう。そこは、今後の連載で見返す原動力にしてくれると思いたい。

 歌舞伎がテーマになった映画『国宝』の大ヒットで、同じ古典芸能の能楽がテーマになっていることや、御曹司と一般人がお互いに高め合い競い合うストーリーが重なる『シテの花』は、話題性に作品自体の面白さがあって放っておいても次に来そう。『廻天のアルバス』は、なかなか載らない『葬送のフリーレン』への渇望を埋めて、冒険ファンタジーの楽しさを与えてくれている。

 バトルが熱い『シルバーマウンテン』にラブコメ、スポーツといった多彩なジャンルの作品が、今の「少年サンデー」誌上に載っていることを再確認させてくれたノミネート作品リスト。印刷部数では2025年1月から3月の平均発行部数で107万部の「週刊少年ジャンプ」や30万部の「週刊少年マガジン」に対し、12万部と後塵を拝している「週刊少年サンデー」だが、「サンデーうえぶり」のようなWebからの発信も含めて、作品は読者にしっかりと届いているようだ。

 「週刊少年ジャンプ」からは、宇佐崎しろ作画、西修原作の『魔男のイチ』がノミネート。スタイリッシュで切れ味のあるアクション描写で人気となって、本誌での連載も高順位をキープしている。『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』が終わった「週刊少年ジャンプ」の次を担うと期待されているだけに、受賞となって盛り上がりたいところだろう。一方で、沼駿『超巡!超条先輩』は、ノミネートの発表と入れ替わるように連載が終わり、アンケートに左右されるシステムの厳しさを見せてくれた。せめて得票を集めて支持者がいることを示したい気分だろう。

 「マンガ大賞2025」を獲得した売野機子『ありす、宇宙までも』や、同「マンガ大賞2025」で候補となった田村隆平『COSMOS』は知名度もあって健闘しそう。30歳を過ぎた元アイドルが、令和に入って自堕落な日々から変わろうとする里見U『平成敗残兵☆すみれちゃん』は、痛々しくも面白い内容で熱いファンを掴んでいる。夢破れた地下アイドルがボカロPと出会い再起に挑むはんざわかおり『アイドルビーバック!』ともども、アイドルの競争と淘汰が激しい世界に挑む作品として、次に来ることは確実だ。

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