上田竜也がデビュー小説にこめた"仲間"への想い 『この声が届くまで』トークイベントレポート

「やっぱり仲間がほしい」いつかこの小説が“予言の書”となる未来へ
小説を読み進めるうちに伝わってくるのは、上田にとって仲間とステージに立つことへの特別な思いだ。「苦労を共有して、ひとつの幸せをみんなで掴みにいく、掴んだ喜びをみんなで共有できるっていうのが、好きなんでしょうね。いつからこんな人間だったかわかんないんですけど……」と照れくさそうに笑う姿は、ライブのラストにメンバー全員と手を繋いで挨拶をする場面に純粋に心を動かされた龍そのもののようにも感じた。
「ライブを作るまでにはいろんなことがあるんですよ。人数が多ければ多いほど、いろんな意見があって。話し合ってひとつのものを作っていくんですよ」と、彼がいくつも乗り越えてきたであろう景色を思い返しながら語っているのがわかった。「ファンの前で全員が一体感になる瞬間は、やっぱりこのグループでよかった、このグループだからこの景色を見れたって思う瞬間なんですよ。あれはちょっと自分の中では特別」と噛みしめる。
だからこそ、担当編集者から小説家として今後も書き続けるかどうかという予定を聞かれて「僕はミュージシャンなんで」と答えたというエピソードも深く納得した。「ちょっと恥ずかしいじゃないですか!」なんて茶化しながらカメラを遮る素振りを見せていたが、「発売する前に僕ら解散しちゃったんで。話を書くことで、成就させたっていうか……」と本音をこぼしていたことからも、その言葉に嘘偽りはないことがわかる。これからも音楽を通じて、仲間とあの瞬間を迎えたい。その強い思いが、上田にこの小説を書かせたのだ。
実際、この小説も発表して終わりではなく、映像化など次のプロジェクトへと続いていくイメージを持っているという上田。「仲間と音楽をやりたいですよ、それはめちゃくちゃあるから。(小説と)リンクさせていったら面白いなって思います」と夢をふくらませる。そこには新たな仲間との出会い、そしてまだ見ぬ景色があるはずだ。いつか振り返った時に、この小説が「予言の書」だったなんて思わせてくれる。そんなふうに上田の夢が叶う未来が広がっていることを期待している。
■書誌情報
『この声が届くまで』
価格:1,760 円(本体 1,600 円+税)
発売日:2025 年6月27日
出版社:KADOKAWA、コルク



























