上田竜也がデビュー小説にこめた"仲間"への想い 『この声が届くまで』トークイベントレポート

物語を紡ぐきっかけは「グループに何を貢献できるか」という思い

改めて10年前に小説を書こうと思ったきっかけについて質問されると、上田は「めちゃくちゃ長くなりますけど、大丈夫ですか? いや、本当、これ10年前、ちょうど田口(淳之介)が抜けるときです」と話し出した。
「KAT-TUNが充電期間入りますってときに、自分がグループに何を貢献できるかなっていうのをすごく考えて。一般的にはやっぱり物語の主題歌をグループに持ってこれるのが、一番いいのかなと思って。じゃあ、ドラマ出させてくれとか、そういうよりも自分で考えて作って出したほうが早いなってことで」と当時の心境を赤裸々に告白。
「最初から小説っていうことじゃなかったんですよ。漫画の原作でもいいですし。とりあえず何か物語を書いて、そういう実写かなんだかして、持ってこれたらいいなっていうのがまず第一で思って。10年前書き始めたんですけど、3分の2ほど書いた後に事務所に『見てください』って提出したら、『こんなことしてる暇があったら舞台を見なさい』って言われて。却下になったんですね」と、構想から10年かかった理由を説明する。
「めちゃくちゃ悔しかったですけども。『無理』っつったら、無理なんで。当時は。諦めざるを得ない状況になって。で、去年ですかね。いろんな状況も変わって、自分がやりたいことをやれるっていう契約にもなって。『じゃあ、もう一度これを書き出そう』ということで再開して。ちゃんと発売できたなっていう長いストーリーがあります」と、そのまま小説にもなりそうな背景を披露した。
頭の中で勝手に動くキャラクターたちをスマホで文字に
小説を書くことそのものには、苦労を感じなかったという上田。「漫画脳なんですよね。キャラクターが勝手に喋るんですよ」と執筆活動にはこれまで何千、何万と読んできた漫画たちが助けになったと言う。また「歌詞を作るのにも似ているかも」と続け、結果としてこれまで自分の中で得てきたもの「すべてが生かされている」と感じたそうだ。
担当編集者を驚かせたのが、執筆活動をスマホで行なっていたこと。「パソコンが苦手なんですよ。今は仕上げるときに、ちゃんとできるようになりましたけど、当時はストレスでぶっ壊したくなって(笑)!」と、またまた上田節が炸裂して会場が笑いに包まれる。
思い立ったときに場所も時間も選ばずにスマホで書き進めてきた小説は、昨年の6月頃に完成したという。校正の工程では、1日3時間と決めて苦手だったパソコンにも向き合ったそう。そのコツコツと続けてきた根底には「諦めたけども、諦めないっていうか。どうにかしてやりたいっていう気持ちが強いのかも。負けず嫌いの気持ちがあった。自分のその時とった行動が『間違いじゃなかったな』っていうふうに行動したいっていうのは自分の中にあるのかもしれない」と分析した。
ちなみに、どんなストーリーにしようかという初期の打ち合わせでは、バンドストーリーとは別にヤンキーがボクシングに行くというアイデアもあったとも。しかし、「それを出した時に『イヤ、ありきたりでつまんねぇ』って言われて(笑)」と打ち砕かれたのだと語って笑いを誘う。
また、漫画といえば漫画家として活動する中丸雄一とのコラボにもあるかどうかと問われると、「しないでしょ!」とバッサリ。「大喧嘩して殺し合いになると思います! あいつ俺の似顔絵描くとき『ガリガリ君』ですからね。いないでしょ、ここに『ガリガリ君』!」と小説の表紙を指しながら作風の違いを強調。しかし、「こういうのがニュースになったら近いうちに連絡がくるでしょう」と語るところにも、長年活動を共にしてきた関係性が垣間見えるようだった。























