少女たちがみた沖縄戦の地獄絵図……衝撃の戦争マンガ『cocoon』で描かれた“想像の繭”というテーマ

戦後80年のタイミングでアニメ化が実現した『cocoon~ある夏の少女たちより~』。NHK BSですでに先行放送を終えているが、8月よりNHK総合で本放送が行われる予定となっている。
原作となったマンガ『cocoon』は、『センネン画報』などで知られる今日マチ子が手掛けた作品で、戦争の悲惨をこの上なく圧倒的なリアリティで描き出しているのが特徴だ。なぜその内容が多くの人の心を揺さぶっているのか、詳しく紹介していきたい。
同作はフィクションと銘打っているものの、題材となっているのは、凄惨をきわめたことで知られる太平洋戦争末期の沖縄戦。あとがきでは、ひめゆり学徒隊から着想を得たことが明かされている。
ひめゆり学徒隊といえば、戦争中に動員された沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の女子生徒たちを指す言葉だが、作中ではその歴史的事実を反映したエピソードが次々と描かれていく。しかしそこで用いられている手法は、リアリズムとはまったく違う独創的なものだ。
物語が始まるのは、「まるで天国みたい」な島。主人公のサンとマユは島の学校に通う女子生徒で、無邪気な笑顔を浮かべて遊びまわる姿は、天使のように浮世離れしている。ところがそんな生活のなかにも戦争が暗い影を落としており、後輩・ユリの背中には空襲でできた大きな火傷の痕があるのだった。
さらに2話以降では、女子生徒たちが看護隊として軍事活動に協力することに。その時のサンにはまだ悲壮感はなく、むしろ「ようやくお国の役に立てるときがきた」と母親の前で誇らしげな顔すら見せていたのだが、すぐさま状況は一変。ガマ(洞窟)を利用して作られた軍の病院では、筆舌に尽くしがたい光景が彼女たちを待ち受けていた。しかしサンはそんな状況でも、いやむしろそんな状況だからこそ夢を見ることをやめない……。
そもそも今日マチ子の画風は、繊細な線を駆使したかわいらしい絵が大きな特徴。同作でもそれは変わらず、絵本のような雰囲気で物語が表現されていく。だからこそ凄惨な現実とのギャップが生まれ、美しい夢が蹂躙される様子に大きく心を揺さぶられる。
また、画風だけでなく作品自体が“想像の繭”というテーマを打ち出していることも重要だ。サンとマユは、苛烈な戦場の出来事から身を守るために、「わたしたちは想像の繭に守られている」というおまじないを唱える。すなわち繭を作ってその中に閉じこもる蚕のように、少女たちは想像の繭で外界から身を守り、生き延びようとするのだ。
作中で描かれるのは現実そのものではなく、空想的な少女の目から見た世界だが、だからこそ繭を破って侵入してくる現実の恐ろしさを痛感させられる。同じ少女をテーマとした作品ではあるものの、リアリズムを重視し、当時の社会を生きる人々の生活を克明に描写したこうの史代の『この世界の片隅に』とは対照的な作風と言えるだろう。























