『火垂るの墓』『アルプスの少女ハイジ』貴重な資料の数々を展示 高畑勲のアニメ作りの秘密に迫る「高畑勲展」

『赤毛のアン』『火垂るの墓』といったアニメ作品で世界的な評価を受けている高畑勲監督のキャリアを振り返る展覧会『高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。』が6月27日から9月15日まで、東京都港区の「麻布台ヒルズ ギャラリー」で開催。緻密な構想ノートや盟友の宮﨑駿監督が描いたレイアウトなどが並んで、名作の数々がどのように生まれたかを知ることができる。
【写真】『高畑勲展』は貴重な展示がズラリ 『パンダコパンダ』のパパンダに抱きつき写真を撮れるスポットも
高畑勲が原作にどうアプローチしたかがわかる展示がズラリ
Netflixで7月15日から日本でも配信される『火垂るの墓』は、野坂昭如の同名の小説を原作に高畑勲監督が手がけたアニメ映画だ。「アメリカひじき」とともに第58回直木賞を受賞した原作小説をアニメ化にするに当たって、高畑監督は小説のコピーをノートに切り貼りし、メモ書きやコンテのイメージを書き加えながら全体の構想を練っていったという。
『アルプスの少女ハイジ』のTVアニメでも、ヨハンナ・シュピリの原作を読み込んだ上で、1年におよぶシリーズの構成を検討し、ハイジがアルプスの自然の中で成長していくパートを、原作の割合から大きく増やして描くことにしたという。『高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。』には、そうした高畑監督の創作過程がわかる品々が展示されていて、原作を深く読み込んだ上で自分なりのアイデアを載せ、映像の形にしていることが分かるようになっている。
はるき悦巳の漫画が原作の『じゃりン子チエ』の場合は、日本の風景を描きたかったという思いから、美術監督の山本二三と共に大阪のドヤ街に寝泊まりしてロケハンを行った。ほかにも『赤毛のアン』や『母をたずねて三千里』『セロ弾きのゴーシュ』など広く知られた原作を元に、文学的で叙情的なアニメを作った高畑監督。原作物のアニメが増えている現在、高畑監督が原作にどのようにアプローチして映像化したかを知ることは、クリエイターにとって大いに参考になりそうだ。
アニメーターを目指している人にとっても、見どころの多い展覧会だ。『千と千尋の神隠し』や『君たちはどう生きるか』でアカデミー賞を獲得した宮﨑駿監督が、高畑監督の作品のために描いたレイアウトや絵コンテなどが展示されているからだ。『アルプスの少女ハイジ』や『赤毛のアン』で宮﨑が手がけたレイアウトからは、絵のうまさだけでなく、シーンに合わせた表情の捉え方や画面の見せ方などを見て取れる。
高畑監督にとって最後の映画作品となった『かぐや姫の物語』のコーナーでは、アニメーターの橋本晋治による疾走シーンの原画を連続して並べて、どのように動きを表現しているかが分かるようにしている。意外なところでは、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明が、『火垂るの墓』に登場する重巡洋艦「摩耶」を描いたレイアウトが初披露されていて、メカを描く腕の確かさを感じさせる。樋口法子によるハーモニー処理されたセル画をいっしょに並べて、宵闇の中に摩耶が威容をのぞかせている様を目の当たりにできる。

『火垂るの墓』では、『耳をすませば』を監督することになる近藤喜文や『屋根裏のラジャー』を監督した百瀬義行が手がけたイメージボードが並び、戦前戦中の日本の風景をどのように見せようとしたかが伺える。イメージボードは『平成狸合戦ぽんぽこ』のコーナーにも並んでいて、こちらは百瀬と大塚伸治が狸たちの日々をユーモラスに描いていった映画の雰囲気を、どのように作っていったかが分かるようになっている。





















