“創作すること”を描く漫画がトレンドに 『ルックバック』『これ描いて死ね』に続く注目作『どくだみの花咲くころ』

“創作”描く漫画がトレンド?

 『ルックバック』や『これ描いて死ね』、『海が走るエンドロール』など、ここ数年“創作すること”について描いた漫画が支持を集めている印象だ。今年の「マンガ大賞」で第5位に輝いた『どくだみの花咲くころ』も、そうした創作をめぐる物語の系譜として読むことができる。同作が面白いのは、ほかの作品とはまったく違った目線からこのテーマに斬り込んでいることだ。

創作めぐる物語の系譜

 『どくだみの花咲くころ』は城戸志保が『アフタヌーン』(講談社)で連載している作品。物語の主役となるのは、信楽大伍と清水史郎という2人の小学生だ。

 信楽はかんしゃくもちで、周囲から腫れ物のように扱われている問題児。それに対して清水は誰もが認める優等生で、年齢のわりに賢く達観しているが、それゆえ身の回りの出来事に退屈さを感じていた。

 ところがある時、清水は図工の時間に信楽が作った粘土作品に心を奪われてしまう。一見不気味な造形物で、誰もその価値に気づいていなかったが、清水だけはそこに天才的な芸術センスを見出すのだった。清水は信楽が創作するものを夢中で観察するようになり、さらには「助手」になりたいと申し出る。

 こうして2人は親密に付き合うようになるが、そこで清水が気づくのは、クラスメイトの信楽へのイメージが偏見に満ちていることだった。たとえば校内でハムスターの骨を大量に埋めているというウワサがあり、不気味がられていたが、それはちょっとした誤解でしかない。清水は自分が直接見聞きした情報で、あらためて信楽のことを捉えなおしていく。

 さらにいえば清水は、一方的に信楽を観察する側にいるわけではない。常識人が変人を観察して面白がるという構図にはならず、むしろ清水の方こそ変人っぷりを露呈するからだ。信楽の作品を手に入れたくて泣きわめいたり、作品を保存してもらうために突如ジュラルミンケースを贈ったりと、奇行ばかりが目立つ。信楽はそんな清水にあきれるような目を向けつつ、少しずつ打ち解けていく。そうして2人は、お互いにかけがえのない理解者になっていくのだった。

 なにより面白いのは、この“観察”という行為が作品の大きなテーマにもなっていること。というのも信楽のアートは、身の回りの人間や動物などをじっくり見つめることで成り立っていて、作中では創作=観察という構図が何度も強調される。

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