『ジークアクス』第10話 シャリア・ブルが気づいた真の「自由」とニュータイプとしての「目的」

■ニュータイプは強くあらねばならない
しかしシャリアが抹殺を狙っていたキシリアは、ニュータイプに対して全く異なる考えを持っていることも、同じく第10話で明らかになった。劇中、キシリアはニャアンに対して「強さとは生き残ろうとする意志であり、淘汰されるのならばそれは強さではない」「ニュータイプに正しさはいらない。強さがあればそれでいい」という自分の考えを語る。ニュータイプが人類の進化した姿であるならば、まず生物的な淘汰にさらされるものである。ならばニュータイプは生き残る意思を持って強さを身につけ、淘汰を生き延びてこそ生存できるという、苛烈な考え方である。「兵器」としてのニュータイプの能力を伸ばして専用機を与えて部隊を編成し、圧倒的な戦力として活用するキシリアは、「ニュータイプは強くあらねばならない」という自分の考えを実践し、ニュータイプに強さを与えることで生存させようとしている。まず強くなければ、「新種の人類」であるニュータイプは生き残ることができない。そのためには兵器としてのニュータイプの能力を最大限に活かすべきであるとキシリアは考えているのだ。
この考えは、「ニュータイプはニュータイプとして生きるべき」というシャリアの考えとは完全に逆である。そしてマチュとニャアンはそれぞれ全く逆の考えを持つ保護者のもとでモビルスーツに乗り、戦場へ飛び出し、イオマグヌッソの中央部で対峙することになってしまった。
惜しいのは、放送スケジュールがタイトすぎて「因縁の二人の対決!」という盛り上がりが薄く感じられる点である。マチュとニャアンとシュウジが一緒にクランバトルに参加しつつ人間関係を深めていく描写に時間を割けなかったため、「そもそもマチュとニャアンの間にそこまで友情があったのか」「なぜ二人がこれほどまでにシュウジに固執しているのか」という点に対して、視聴者がかなり行間を読んで想像を膨らませる必要が生まれてしまった。「超大型兵器のど真ん中で、宿命の二人が対決!」というシチュエーションなのに、「振り返ってみると、そこまで強烈な因縁が生まれる描写もなかったような……」という気がしてしまうのは、なかなか残念なポイントではないだろうか。せめて2クールあれば、もっとしっかり人間関係が描写できたのでは……と思わないでもない。
幸い、話数はまだ2話残っている。マチュとニャアンの直接対決を来週じっくりと描いても、その向こう側へとたどり着くための1話が残っているはずだ。来週はどのようなことになるのか、座して待ちたい。





















