「働き方改革」における私たちの失敗とは? バブル時代の働き方を振り返って

「働き方改革」の失敗とは?

「楽しくないホワイトな職場」だらけに

 さて、今日の「働き方改革」後の日本の話。これは僕の身の回り、出版業界に限った話かもしれないが、「今どき残業なんてありえない」という空気が当たり前になった。その一方で、「仕事がつまらなくなった」という声が、編集者のあいだでよく聞かれるようになった。

 ホワイト化とは、平たく言えば、これまで個人に偏っていた仕事が、情報共有によってチームに分散されるようになったということだ。誰か一人に負荷がかかることなく、誰が抜けても仕事が回る。スケジュールも共有し、いつでも代替可能になる。その結果、「属人的な成果」が見えづらくなった。

 編集者という仕事は、時間をかけて築いた人間関係に支えられている。たとえば売れっ子作家に信頼される編集者というのは、その作家が無名のころから目をかけてきたような人だったりする。目利きである以上に、個人の時間や私費を注ぎ込みながら関係を築いてきた結果だ。それに対して今は、そうした個人の努力は「非効率」とされ、評価されづらくなってしまった。

 1人の編集者が企画して、つくった記事なら、褒められるのも自分。成果が成果として認められない。労働環境の透明化を進めたことで、皆のモチベーションが下がってしまった。

 「楽しいけどブラックな職場」が「楽しくないホワイトな職場」だらけになっている。これが「働き方改革」の弊害だというのは僕だけのうがった見方だろうか。「働くことの楽しさ」はどうやれば取り戻すことができるのか。1度進んだ時計の針を巻き戻すことはできないが、改革のプランBについてはどこかで考えることはできないだろうか。

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