アイドル誌『POTATO』休刊 老舗雑誌が示した読者を巻き込む“企画力”と“保存性”の高さ

アイドル誌『POTATO』が休刊

“推しペア”を決める読者投票企画『P-1グランプリ』

 また読者投票企画で注目を集めたといえば、STARTO ENTERTAINMENTアイドルたちのなかでペアの頂点を決める『P-1グランプリ』も記憶に新しい。ペアといったらこのコンビと言いたくなる「とにかく最強!イチオシペア」から、絆の深さがファン心をくすぐる「永久に共に運命共同体ペア」、そして今後の活躍が期待できるジュニア限定で「次世代シンメペア」という部門もあった。さらには「そのギクシャク、本当!? ビジネス不仲ペア」や「教室の窓際、机前後で座っていそうペア」なるちょっぴりマニアックなペアリングまで、様々な組み合わせをファンが投票していくというもの。

『POTATO 2025年5月号』

 そして、投票の盛り上がり次第で推しペアが表紙を飾るというのも、大きな見どころ。結果として『P-1グランプリ』は、Snow Manが席巻する形に。第1回は、渡辺翔太&宮舘涼太の通称「ゆり組」ペアが最多得票数を記録。幼なじみである2人の紡いできた物語がクローズアップされた。続く第2回は岩本照&深澤辰哉の「いわゆか」ペアが、そして第3回は阿部亮平&佐久間大介の「あべさく」ペアがそれぞれ表紙を飾った。

 長い期間ジュニアとしてデビューを目指して苦労を重ねてきたSnow Manと、その地道な頑張りを応援し続けてきたファンの思いがこの企画を活気づけたといえるだろう。その熱気は、新たなファンにとっても知識を深める絶好のチャンスになる。

 そして表紙を飾ったグラビアも、それぞれペアの雰囲気をイメージしたものでアイドルたちへの理解が深いからこそ撮れた写真ばかりだった。『POTATO』の写真と紙質が好きだという読者の声もSNSで見受けられたのも納得。収録されたピンナップや切り抜きを飾ったりと、やはり雑誌というのは手元に残る特別感がある。

Web全盛の時代での雑誌のあり方

 しかし、だからこそ雑誌作りにはお金がかかる。『POTATO』が、Webやリアルなイベントも取り入れていこうとしていた背景には、そんな模索もあったのではないだろうか。『POTATO』はAmazonのkindle unlimitedで読み放題対象になっていたものの、『P-1グランプリ』などの巻頭特集は読み放題では見ることができない仕様に。それは、直接購入してほしいという願いの現れだったのかもしれないが、ライトな読者にとっては少々物足りないと見られてしまった可能性もありそうだ。

 Web全盛の時代に、紙媒体の雑誌として何ができるのか。そんな挑戦を続けてきた『POTATO』が、ここでその歩みを止めてしまうことが残念でならない。ただ、「休刊」であり「廃刊」ではないことに希望を抱いた。より自由なスタイルで『POTATO』のチャレンジを見せてくれることを期待している。

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