向井理、ディーン・フジオカ、岩田剛典……『パリピ孔明 THE MOVIE』最もキャラ立ちしているのは?

本人役で完全オリジナルキャラクター出演
夢うつつ状態は尾を引く。孔明の幻視はなかなかとけず、ブースから戻ってきたはずの英子が依然として劉備に見える。見た目は劉備。でも中身は英子。このチグハグを演じるディーンがほどよく柔和な仕草と口調でドーナツを頬張る場面は、原作にはない劇場版オリジナル場面として見せどころの瞬間。こんなにチャーミングで嬉々としているディーン・フジオカを見て面映さすら感じる。呆気にとられる孔明役の向井もまた原作でソフトなタッチで描き込まれている目元の変化を細部まで極め、端正に再現している。
原作要素を細部に織り込みながら、こうしたオリジナル描写を全面に押し出す『THE MOVIE』は、孔明の計略で英子の出演を決めた、日本の3大レーベルが競う音楽バトルフェスの怒涛のライブシーンを駆け抜ける。さすがライブシーン描写がSNS上で話題になった原作の実写化だ。中盤からクライマックスは、ほとんどライブ映画を観ている感じ。劇場のスクリーンと音響空間で体感してこそ盛り上がる。総勢50名のアーティストが集結する中、水森かおりや&TEAMなど、実際にアーティストが本人役でパフォーマンスを披露して、現実とリンクするライブ世界があまりに豪華だ。
第2ラウンドのトップバッターとした登場したのが、2010年に三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとしてデビューして、2021年からソロ活動中の岩田剛典。「ペプシ<ペプシ生>BIG ZERO LEMON」のタイアップ曲であり、岩田のソロライブで盛り上がる鉄板曲「MVP」を披露した。圧巻。2024年3月6日にリリースされた岩田のソロ2ndアルバム『ARTLESS』Blu-ray特典映像の聞き手やライブ初日のオフィシャルレポートを担当した経験がある僕からすると、これが『パリピ孔明』の劇場版であることを一時忘れて、うっとり激烈な岩田のソロツアーライブ会場にいる感覚に浸った。これまた孔明的な幻視の拡張世界なのか。岩田はライブ場面だけではなく、出演後の一コマとして薬を煮込む孔明と二言くらい言葉を交わす。『ウェディング・ハイ』(2022)以来となる向井と岩田の共演は、エンターテイメントを仕込むことに余念がない本作だからこそ実現した。あるいはまた、英子に出番を伝える会場スタッフ役として、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのメンバー・長谷川慎がワンシーンだけひっそり出演しているというさりげなさ。本人役で完全オリジナルキャラクター出演が、ここまでキャラ立ちする実写化作品はたぶん他にない。原作にコミットするオリジナル要素の数々が、原作の世界観とキャラクターの魅力に見事な魔法をかけた。これもまた孔明が見立てて、仕込んだ計略なのか。はたまた孔明の幻想だったりして。
























