大学サークル出身芸人、お笑い界を席巻中? 識者に聞く、レベル向上の理由と今後の注目株

大学生コンビ・ナユタ、吉本興業所属へ
大学のサークル活動からお笑いの世界に飛び込み、プロとして活躍する芸人たちが増えている。『M-1グランプリ』で2年連続、準々決勝に進出した大学生コンビ・ナユタは、4月から吉本興業に所属することを発表した。

「大学お笑い」が躍進する背景には何があるのか? 大学お笑いのレベルが向上した理由、そして今後の注目株について、『志村けん論』(朝日新聞出版)の書籍をはじめお笑いに関する多くの著述があるライターの鈴木旭氏に話を聞いた。
大学お笑い出身のスターといえば?
昨年、『M-1グランプリ2024』で優勝を争った令和ロマンと真空ジェシカ。彼らもお笑いサークルの出身者だ。令和ロマンは「早稲田大学お笑い工房LUDO」の先輩・後輩からなるコンビ。真空ジェシカは、ボケの川北茂澄が慶應義塾大学の「お笑い道場O-keis」、ツッコミのガクが青山学院大学「ナショグルお笑い愛好会」の出身だ。
「大学お笑い」という言葉が脚光を浴びるようになったのは、ここ数年のことのように思えるが、鈴木氏によると、その歴史は意外にも長いという。
「1994年に『全国大学対抗お笑い選手権大会』という大会がスタートし、第2回大会(団体戦)で結成前のエレキコミックらが所属する創価大学「落語研究会」が優勝しました。ナイツは同サークルの後輩にあたり、同世代のかもめんたるやザ・ギースが早稲田大学のお笑いサークル出身です。とはいえ、メディアが今のように『大学お笑い』を取り上げるようになったのは、真空ジェシカの世代からでしょうね。その少し下の令和ロマンやラ・パルフェ、ラランドは同世代で、大学時代から大会で競い合うことが多かったと聞きます」
大学お笑いのレベルが上がった理由① 分母の増加
大学お笑いのレベルが向上した原因は、競技人口が増えたことにあるという。
「根本的なことを言えば、大学の進学率上昇が関係していると思います。昔に比べると、早稲田や慶応といった難関校の競争率も下がってきて、そのなかでお笑いが好きな人がサークルに入るという流れが第1段階としてありました。その上で、僕が2つ目の要因だと思うのは、2000年代にテレビでネタ番組が増えたことです。『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』が人気を博し、同時に『M-1グランプリ』をはじめとする賞レースも増えました。『芸人といえばネタ』というイメージを持って育った世代が、2010年代に大学生になったときに、まずネタをやってみようとなったのだと思います」
さらに、鈴木氏は“ある番組”が学生の夢をより現実味のあるものに変えたと指摘する。

「2010年から2017年にかけて放送された、オードリー春日俊彰さんMCの番組『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』の存在も大きかったと思います。同番組は、学生芸人を発掘する企画に注力していて、プロになる前の真空ジェシカや、ママタルトの檜原洋平さんも出演していました。あの番組が、当時の大学生と芸能界をつなぐ役割を果たしていたように思います」
大学お笑いのレベルが上がった理由② 4年間試行錯誤できる
鈴木氏は、大学お笑いならではの強みとして、4年間じっくりと試行錯誤できる点を挙げた。
「吉本の養成所であるNSCでも、入学するとまず相方を探すイベントがありますが、大学では4年間かけて、いろいろな人と組みながら、ネタのスタイルを試行錯誤することができます。令和ロマンもあの2人に落ち着くまでに、さまざまな相方とコンビを組んでいたようです」
お笑い芸人になる入り口として養成所に入るのは、もはや手段の一つに過ぎないのかもしれない。鈴木氏は、博多大吉がラジオで明かしたあるエピソードを挙げる。
「令和ロマンが初めて『M-1』で優勝した際、大吉さんが今田耕司さんと話したそうなんです。今田さん曰く、昔は養成所に入っても1年で卒業するから、実力が伴わないまま芸能界入りすることが多かった。だけど、大学でお笑いをやっていれば、実質芸歴5年目でデビューすることができると。それに共感したのか大吉さんが、『M-1取りたいんなら、大学へ行け!』と冗談まじりに言っていたのが印象に残っています」




















