漫画『黒執事』なぜメディアミックスされ続けるのか? 根強い人気の要因を考察

『黒執事』はなぜメディア化され続ける?

 2006年の連載開始から、長年人気を集める『黒執事』。TVアニメシリーズでは、2024年放送の第4期「寄宿学校編」に続き、『黒執事 -緑の魔女編-』がいよいよ放送開始となる。アニメ映画や実写映画化、2.5次元舞台など、連載開始から約20年にわたってメディアミックス化され続ける人気の要因を考察したい。

「シャーロック・ホームズ」的謎解きと華麗なる一族的エピソード

 『黒執事』は、イギリスの名門貴族ファントムハイヴ家の当主・シエルとその執事・セバスチャンが、様々な未解決事件や奇妙な現象の真相を暴くというミステリー要素が見どころの作品だ。ただ、作品のストーリー上は、シエルたちが様々な事件を解決する推理漫画的な体裁をとりながら、事件解決と直接関係しない19世紀末のヨーロッパ貴族ならではの設定やエピソード、ギャグ要素などがふんだんに盛り込まれているのも、本作の魅力と言えるだろう。

 作中よく登場するのはティールームや美しい庭でのアフタヌーンティーのシーン。また、狩猟や屋敷での舞踏会など、優雅でゴシックなヨーロッパ貴族の日常シーンも多く登場する。
 
 例えば、主人公のシエルは無類のスイーツ好き。そのため、毎回「アプリコットと抹茶のミルフィーユ」や「リンゴとレーズンのディープパイ」などの趣向を凝らしたスイーツをセバスチャンが料理するシーンが登場したり、他にも使用人たちの家事エピソードが差し込まれていたりする。こうした殺人事件や謎解きと関係のない貴族設定やエピソードも本作を楽しむポイントとなっているのだ。

徐々に明らかになるシエルとセバスチャンの契約

 イギリス生まれのミステリー作品といえば『シャーロック・ホームズ』が有名だが、本作主人公のシエルとセバスチャンの関係性もまた、主人とそのアシスタントとして事件を解決していく、一見推理小説のバディ的なキャラ設定となっている。ちなみに、本作の登場キャラには、アーサー・コナン・ドイルをイメージしたキャラクターが登場し、他にも『シャーロック・ホームズ』へのオマージュを意識させるような描写が作品随所に散りばめられている。

 ただ、本作がユニークなのは、シエルとセバスチャンの関係性が、よくあるバディ的関係ではない点だ。時にはバディ的なやり取りも行うが、彼らには明確な主従関係があり、セバスチャンにとってシエルの命令は絶対。料理から戦闘まで、言いつけを完璧にこなすだけでなく、有事の際は身を挺して主人の命を守る。彼はあくまで執事なのだ。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる