ゴマちゃん達の物語がついに完結! 『青少年アシベ』原作者と二次創作者による“夢の続編”が生まれた背景

『青少年アシベ』ゴマちゃん達の物語が完結

「懐の深さがファンを惹きつける」笑平が実感した森下作品の魅力

――完結おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください。

笑平:ありがとうございます。高校生のアシベ達に遊んで貰えて幸せな時間でした。

――まずは『少年アシベ』との出会いについて教えていただけますでしょうか。印象に残っているエピソードなどもございましたら教えてください。

『少年アシベ』1巻 P043より(©森下裕美・OOP・/双葉社)

笑平:実はリアルタイムでは読んだことがなく、初めて『少年アシベ』に触れたのは成人してからです。友人から「アシベ面白いから読んでみ」と勧められたことをきっかけに読み始めて「おもしろ…!」となったのが初のアシベ体験でした。カラオケボックスで友達と単行本を読みながらアシベ談義したのを覚えています。

 特に印象的だったのは、1巻43ページに収録されている「友達はできたが」です。パパの仕事の都合でネパールに引っ越す事になったスガオ君が、仲良くなったお猿さんにアシベの顔を描いたお面を被せて寂しさを紛らわせようとするエピソードです。初期のスガオ君のアシベへの執着具合が不憫すぎて…。一方、アシベはケロッとした様子で生活しているのがまた面白くて好きです。

『少年アシベ』7巻 P087より(©森下裕美・OOP・/双葉社)

 他の印象的なエピソードは、7巻84~87ページに収録の「二人のゲレンデ」です。天堂先生と彼に片想いしている女子大生・鱶田のお話です。天堂先生とスキーに行きたい鱶田は、先生を騙してスキー場に連れて来たものの、到着していきなり骨折してしまう。鱶田がロッジのベランダで泣いていると天堂先生がやってきて、鱶田を背負って一緒スキーで滑ってあげる…というお話です。

 天堂先生に人の心があった事に感動しました。自分の肉体にしか興味がなく本能のまま生きる天堂先生と、その天堂先生に執着する鱶田が回を重ねるにつれて少しつずつ仲良く(?)なっていく様子が好きです。

――『青少年アシベ』がスタートしたきっかけは、森下先生が二次創作としてアシベを描かれていた笑平先生を見つけたことだったと過去のインタビュー記事で拝見しました。森下先生と一緒に作品を作っていくにあたり、二次創作時から描き方を変えた点などがありましたら教えてください。

笑平:キャラクターを手癖で描くとフェチズム全開のガタイが良い男になってしまうので、なるべく細い体つきになるように意識しました。

――連載を続けていくなかで苦労した点、良い化学反応を感じた瞬間がありましたら教えてください。

『青少年アシベ』5巻 P055より(©森下裕美・OOP・笑平/双葉社)

笑平:森下先生からいただいたネームを元に自分が作画をするのですが、そのネームがもう完成品で「みんなかわいい!このまま月刊アクションに掲載してください!」と思うほどでした。すでに完成しているものに自分は一体何が出来るのかと色々考えた結果、頓珍漢なことをたくさんやらかしました…。それでも森下先生と編集さんは毎回良いところを見つけて褒めてくださり、ありがたかったです。

 あと、良い化学反応と言いますか、キャラクターデザインの時にとても楽しいことがありました。『青少年アシベ』から登場する新キャラクター・エミリちゃん(アシベの彼女)のデザインをほぼ自分に任せてくださったのですが、自分の描いたエミリちゃんを元に森下先生がネームでエミリちゃんを描いてくださる…。それがもうめちゃくちゃに可愛いのです!とても親しみやすいデザインになりました。それがすごく楽しくて良い化学反応だったのかなと思います。

――森下先生がネームを、笑平先生が作画という2人体制で1つの作品を制作していくにあたり、色々な出来事があったかと思います。笑平先生がマンガ家として新たに得た気付きや、楽しかった思い出がありましたら教えてください。

笑平:森下先生の漫画はかわいくてシンプルで読みやすくて読後にホッとします。キャラクター達がみんな優しい。変わり者がいても、まあ仕方ないか…というような懐の深さがファンを惹きつけるのだろうと思いました。森下先生が天性の感覚を使って生きていくなかで会得していったであろう“厚み”をシンプルな線とネームから感じました。

 楽しかった思い出は…実はメモ帳に長々と書いたのですが、規格外の無礼者過ぎるエピソードしかなくて書けません(笑)。取材などに同行させて頂き、森下先生を見ているのが楽しかったです。

『青少年アシベ』5巻 P063より(©森下裕美・OOP・笑平/双葉社)

――1~9巻のなかで特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。理由もあわせて教えていただけますと幸いです。

笑平:1つ目は5巻44話「思い出の・・・」です。先ほどもお話したエミリちゃんの子供時代のエピソードです。

 遊園地に遊びに来たエミリちゃん一家ですが、迷子になったエミリちゃんを家族は遊園地に忘れて帰ってしまいます。薄暗くなり始めた遊園地に一人置いてけぼりにされたことに気づいたエミリちゃんは「やったぁ ここに住もうっと」と言い、幸せな気持ちで5日間遊園地で暮らす。このエピソードを読んで、何事も受け取り方次第だなと思いました。現在の受け取り方次第で出来事は未来の自分にとって苦いものにも楽しいものにも変わるのかとエミリちゃんを見て感じました。

 2つ目は、8巻74話の「出会い」です。ネパールの上流家庭の息子・ララ君と付き人のサルバギャさんの出会いのエピソード。ララ君が嫌がるチットちゃんと強引に結婚しようと大暴れするなか、サルバギャさん視点で回想エピソードが始まります。

 貧しくて物を盗んで暮らしていた22歳のサルバギャさんが路地裏でボコボコに殴られているところを、裕福な家の息子のララ君が助け、その後良い仕立て屋さんに連れて行き良い服を着せ温かい家に連れて帰る…。語彙力がなくて説明出来ないのですがとても良いお話なのでぜひ読んでいただきたいです。

――笑平先生ご自身にとって本作はどのような作品でしたか?

笑平:この質問は難しくて適切な言葉が出てきません。プレゼントのような作品?と呑気な事を考えていたのですが、そんな軽い物じゃない…。言葉が出ないです。

――最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

笑平:ゴマちゃんファンミーティングでゴマラーさん達が連れてきた、大切なゴマちゃんのぬいぐるみを触らせていただいたり、見せていただきありがとうございました。どのゴマちゃんも、長い時間家族として大切にされてきたことがわかるゴマちゃん達でした。

 現在、自分もゴマちゃんぬいを含む大量のぬいぐるみに囲まれて生活しております。自分がぬいぐるみを大切にするようになった今、あの時ゴマちゃんぬいのパパママは自分みたいなよくわからんもんに、よく大切なゴマちゃんを触らせてくれたな…と感じています。無遠慮に触ってしまい申し訳ありませんでした。触らせていただきありがとうございました。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる