THE RAMPAGE 岩谷翔吾×木爾チレン『二人一組になってください』対談 「言葉が刃になっている今の時代に読んでほしい」

岩谷翔吾 × 木爾チレン『二人一組~』対談

自分にしか書けないことを小説に?

ーー本作で「二人一組になってください」というデスゲームが行われた背景には、クラスでいじめられた水島美心(みずしまみしん)が、体育の授業でいつもそう言われて辛い思いをしていたことがありました。そうしたいじめという主題について、お二人は何か思うことはあるでしょうか。

木爾:私自身、クラスの仲良しのグループにも含まれていなかったのが当たり前の風景でした。いじめられていたわけではないんですけど、みんなからは私のことが見えていないというか。亡霊のような感じで、その状況はすごく辛かったですね。

 ある日、一軍の子がマスカラを忘れて誰かに借りようとしていたときに、私の顔を見て「あんたは持ってへんわな」と言われて、それも忘れられませんが、体育で二人一組を組む場面で、一軍のギャルの子が手を繋いでくれたことがあって、その子は何気なく繋いだだけでもう覚えてないと思うんですけど、私からしたら忘れられないくらい嬉しかった。

 私が教室に馴染めなかったのもあるんですけど、もし誰か一人でも手を差し伸べてくれていたら、もっと学校に行くのが楽しかったのかなと思うんですよね。だからこの小説を読んでくれた学生さんが、クラスで孤立している生徒に対して、挨拶だけでも声をかけようと思ってくれたらいいなと。それがこの小説を書く意義でした。

岩谷:現代はリアルだけではなくて、SNSでの匿名での書き込みもあります。学校というコミュニティ内だけだったのが、今は誰でも簡単にいじめに加担できる世の中になってしまっている。大人の世界でも、誰かが不祥事を起こしたときに、自分の人生に関係がなくて会ったことすらないのに、匿名で誹謗中傷を書くことができてしまう。そんな言葉が刃になっている今の時代に、多くの人にぜひこの小説を読んでほしいですね。

岩谷翔吾、横浜流星『選択』(幻冬舎)

ーー岩谷さんの小説『選択』では、主人公の亮と幼馴染みの匡平が命の瀬戸際まで追い詰められるシーンが描かれていました。『選択』も『二人一組になってください』も、人が死に直面したところから生を眺めるような側面があると思いました。

木爾:確かに共通しているところかもしれません。岩谷さんは小説を書こうと思ったときに、希望の物語というよりは、絶望の物語を書きたいという思いがあったんですか?

岩谷:僕が第一作目を書くとなったら、どうしても色目で見られてしまうと思ったんです。タレントが本を出して、ダンサーとしての希望の物語を書くだろうと。でも僕はひねくれた性格で、そういう風に見られるのが癪だったので、その逆をいきたいなと思いました。だから、犯罪を扱ったバッドエンドの話を書いたんです。

木爾:それがすごいですよね。私は自分のなかにあるものしか書けないタイプなので、自分とは違う物語を書こうと思ったのがすごいと思います。

岩谷:僕は逆に自分のことを書こうと思うと、恥ずかしくて全く進まないんです。それこそ2作目の小説は、自分のフィールドの話を書こうと思って意気込んでいたんですけど、なかなかむずかしくて。自分の中で自己完結してしまっているので、書かなくていいか、となってしまう。

木爾:それは岩谷さんがTHE RAMPAGEの活動で自分を完全に出し切っているからなのかもしれません。私は表現する場所が小説しかないので、自分のことをわかってほしいと思うと、もうここに書くしかないんですよね。でも、絶対に岩谷さんにしか書けないものがたくさんあると思います。

岩谷:絶対にあると思うんですけど、やっぱり恥ずかしいんですよね(笑)。

木爾:将棋をやっていた男の子がダンスを始めてLDHに入る……それだけでもすごく面白いじゃないですか(笑)。

ーー本日お二人で対談をしていかがでしたか?

木爾:岩谷さんと比較するもなんですが、夫のけんごくんもイケメンだと思ってるんですけれど(笑)、やっぱり岩谷さんは2次元から飛び出してきたようなレベルのかっこよさで、お話しされている姿を眺めているだけでも幸せを感じる時間でした。そして私からしたら雲の上のような場所で活躍されている方でも、いろんな思いを抱きながら、今ここに立っているんだなと知れました。対談できてすごく嬉しかったです。

岩谷:チレンさんはとても話しやすくて、同じ関西人だということもあって、親しみ深くお話させていただきました。ありがとうございました。

ーー『二人一組になってください』はどんな人にお勧めしたいですか?

岩谷:THE RAMPAGEを応援してくださっている方々が読んだら、どういう感想を抱くんだろうと思いました。特に女性ファンの方は女子校の話に共感しながら読むかもしれないし、それこそTHE RAMPAGEでこのゲームが始まったらどうなるかを想像してもらっても、面白いかもしれません……(笑)。

木爾:確かにそうですね(笑)。ぜひTHE RAMPAGEのファンの皆さんにも読んでもらえたら嬉しいです。

■書籍情報
『二人一組になってください』
著者:木爾チレン
価格:1,815円
発売日:2024年9月19日
出版社:双葉社

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