「全部明け透けに書いた」芸人・川西賢志郎ーーM-1、海外、そして未来、漫才師の肩書が外れて今思うこと

芸人・川西賢志郎 エッセイについて語る

■日本と海外の笑いの違い

――2020年からは、海外のコメディーにも目を向けられています。欧米のコメディアンを見ていると、ユーモアの中に必ずメッセージ性や風刺が含まれていますよね?

川西:今日本で主流のファニーなもの、団体芸で笑わせるものが好きな人もいるから、それはそのままあっていいと思います。だけど、日本はそればっかりになってるから、別の種類のお笑いもあったほうが豊かなのは事実でしょうね。選べるってことですから。

 今思えば、上岡龍太郎さんって僕が最近知るようになった欧米の芸人に似た部分があったと思うんです。特に昨今では報道のあり方も問題になってますけど、上岡さんはずっと前にご自身の番組の中でそれについて苦言を呈してましたから。「今のテレビっていうのは、センチメンタリズムはあるくせにヒューマニズムはない」とかね。

 要するに、「感傷に浸りたい」という感動ポルノ的な側面は大いに求めるけど、そこに本当の温かみとか人情はないんだってこと。芸人やタレントが協力して盛り上げる番組がある一方で、そういう芸人もテレビにいたほうが面白いとは思います。

――「芸人がお笑いを語るな」という方がいるのも事実です。川西さんは、この点についてどう考えていますか?

川西:メッセージ性がないファニーなお笑いを語る必要は絶対にないし、かと言ってお笑いを語れない芸人もどうなんだろうなとも思いますね。

 海外のコメディアンの中には、お笑いを語りながら笑いをとっていく人もいるんですよ。先に「笑いってこうやったら生まれるんだよ」ってことを全部説明して、「今日これをポンポンポンとどこかでやっていくから」みたいなことを言いながらライブを始める。その途中で、本当にさっき言った笑いを入れて会場を沸かせていくんです。

 それ見て率直に格好良いと思ったし、何がダメなんだろうと思って。僕が今回出した本も、全部明け透けに語ってますよね。自分のやって来たことや向き合い方を全部言って、これを見た人がわかったうえで、ライブへ足を運んでくれることがあれば、健全な勝負に持ち込める。そういった位置づけの書籍だと思うし。

 「笑いを語るな」って人は、逆に「語られるとまずい」ってことじゃない?「語られたら、やるの恥ずかしくなっちゃうやん」みたいな(笑)。

■「なんかいいな」の「なんか」に執着して自分のものにしたい

――今後はこんな芸人でありたい、という具体的なヴィジョンがあれば伺えますか?

川西:漫才師という肩書が外れたことを、特にネガティブに考えてないんですよ。少し前まで毎月劇場で何十ステージとかやってたから、時間や場所、活動範囲の拘束があったとも言えるじゃないですか。そう考えると、今は本当に自由なわけです。

 だから、もっといろんな場所に行って、まだ僕が触れてないお笑いとかを見て。その中から、自分の中で引っ掛かる部分や「今のなんかいいな」の「なんか」に執着して解き明かして、自分のものにして。それを舞台に持って行ける芸人でありたいなと思ってます。

 直近で言うと、3月にひとりで舞台に立ってしゃべるライブをやるんですよ。コンビを解散した後、「本を書く」「ライブを開催する」ってところまでは、当初から自分の中で絶対やろうと決めてました。漫才師でなくなった自分のライブにどれだけ興味を持ってもらえるのかわかりませんが、いいライブにしようと思っています。

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<応募締切> 2025年2月25日 23:59まで

プロフィール

川西賢志郎(かわにし けんしろう)

1984年1月29日生まれ、大阪府東大阪市出身。2006年からお笑いコンビ“和牛”のツッコミとして活動し、「M-1グランプリ」にて16~18年の3年連続で準優勝を獲得。24年3月にコンビを解散し、その後は芸人活動を続け、ライブやテレビ番組、ドラマなどに出演。

書籍情報

書名:はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―
著者:川西賢志郎
発売日:2025年2月15日(土)
定価:1,760円(本体1,600円+税)
体裁:四六判並製/216頁予定
ISBN:978-4-04-115956-9
発行:株式会社KADOKAWA

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