話題作『花は咲く、修羅の如く』アニメ第1話を原作と比較 漫画に登場しなかった“桜”が表す心情
1月8日に始まった『花は咲く、修羅の如く』は『響け!ユーフォニアム』(宝島社文庫)で知られる小説家・武田綾乃が原作の漫画(ヤングジャンプコミックス)をアニメ化したもの。アニメでは珍しい朗読を扱った青春ストーリーだが、別媒体で展開するにあたってさまざまな変更が行われている。アニメ第1話「花奈と瑞希」と原作第1話「花奈と修羅」を比較しながら、その創意工夫の一端を紹介しよう。
本作の主人公は人口600人の島に暮らす朗読好きの少女・春山花奈。小学生の彼女がテレビで流れる朗読を観てそれに強く惹きつけられる……という導入から本作は始まる。ただし原作とは違い、アニメでは画面に映る少女が宮沢賢治の小説『花と修羅』を朗読する様子が明確に描写された。
原作ファンには嬉しいサプライズだったが、このシーンに代表されるようにアニメではより朗読を際立たせようという意図を感じられた。第1話を比較する限り、実は原作に比べてアニメではモノローグやコメディチックなやり取りがかなり端折られている。ただ、そのおかげで4つある朗読シーンにたっぷりと尺が割かれ、原作のイメージをベースにした迫力の映像と共にじっくり楽しめるようになっている。
オープニングを経て、Aパートでは高校1年生になろうとする花奈が少年少女を相手に朗読していたところ、それを見ていた高校2年生の放送部部長・薄頼瑞希から部に勧誘される。突然の話に戸惑いながらも断り、花奈は翌日初めてすももが丘高校に登校……という流れは原作もアニメも同じ。このAパートで効果的に使われているのが、原作には存在しない桜の花びらだ。
例えば、瑞希に声をかけられ本格的な朗読への道に誘われた際は花びらが舞い上がり、自身が放送部に入れないことを自覚するときは花びらが地面に落ちる。このように、第1話で取り扱う『春と修羅』にも登場し、入学シーズンにぴったりの桜がAパートを彩りつつ、手足のちょっとした芝居と共に花奈の心情を映像で表現していく。