「60代で亡くなること多くない?」人気漫画家・アニメーター、SNSで囁かれる短命説は本当か? 

■漫画家、短命説の根拠は?

1月11日に86歳になったちばてつやが表紙の「ビッグコミック」。ちばはフルカラーのエッセイ漫画『ひねもすのたり日記』を連載している。

 漫画家は忙しすぎるせいで、若くして亡くなる人が多い――そんなイメージを持っている人は多いのではないだろうか。その筆頭が60歳で亡くなった手塚治虫だろう。亡くなる直前まで『グリンゴ』『ネオ・ファウスト』『ルードウィヒ・B』の3本もの連載を掛け持ちしており、さらに新作アニメの制作など多数の仕事を抱えていた。

 手塚の死因は癌であったが、“過労”と言っていた人もいる。それに頷けてしまうほどの仕事量であった。そして、90年代には石ノ森章太郎が60歳で、藤子・F・不二雄が62歳で亡くなっている。90年代にレジェンド漫画家が相次いで60代で亡くなったことは衝撃が大きく、ある漫画家は仕事の仕方を見直したと語っていた。

 昨年は鳥山明が68歳で亡くなり、改めて漫画家の年齢が注目されたが、一方で、80歳を過ぎても現役の漫画家はいる。昨年、文化勲章を漫画家で初めて受章したちばてつやは、1月11日に誕生日を迎えて86歳になったが、「ビッグコミック」で『ひねもすのたり日記』を再開した。80歳を過ぎても創作意欲は落ちず、現役で活躍中である。

 アニメーターでは、スタジオジブリの宮﨑駿が現在84歳である。正式に発表されていないものの水面下で新作の制作に情熱を燃やしているのではないかと思われる。また、手塚治虫に師事し、アニメ『あしたのジョー』で作画監督を務めた金山明博も85歳である。金山はアニメーターの仕事は引退したが、現在もコミッションイベントなどに出展し、絵を描き続けている。

■「明日にのばせることを今日するな」

  ちなみに、80歳以上で亡くなった漫画家は、矢口高雄(81歳)、さいとう・たかを(84歳)、松本零士(85歳)、藤子不二雄A(88歳)、田河水泡(90歳)、横山隆一(92歳)、水木しげる(93歳)が知られる。調べてみれば、80歳以上まで生きた漫画家は意外に多く、決して短命というわけではないことがわかる。その健康の秘訣は、何かあるのだろうか。

  水木は出版社のパーティーに参加した際、徹夜続きだと語る手塚治虫と石ノ森章太郎の前で“睡眠力”が重要だと説いた。これは水木がエッセイ漫画にしている有名なエピソードだが、水木はどんなに忙しいときでも常に10時間は寝ているといい、睡眠をバカにしてはいけないと語っている。

  また、藤子Aの好きな言葉は「明日にのばせることを今日するな」だった。これは映画『アフリカの女王』に登場するセリフで、藤子Aは著書のなかで、「気楽的な生き方をしろ」という意味だと語っている。そして、「とにかく今日を愉快にすることが一番」であるとも述べている。なかなか深い言葉である。

  これは漫画家に限ったことではないと思うが、無理に仕事を詰め込まずに、しっかり睡眠をとり、ストレスを溜めることなくマイペースで人生を謳歌する方が長生きするというのは、本当なのかもしれない。

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