KADOKAWA、丸善ジュンク堂書店出版社売上初の1位に 躍進の原動力はラノベと児童書?

丸善ジュンク堂書店の2024年出版社別売上でKADOKAWAが1位になった。2023年は3年連続の1位を獲得した講談社に続く2位だったが、4年連続を阻む形でKADOKAWAが初の1位を達成した。3位以下は集英社、小学館、Gakken、新潮社、文藝春秋、ダイヤモンド社、日経BPマーケティング、朝日新聞出版の順で2023年から変わらなかった。
KADOKAWA、作品別ランキングは少ない?
出版取次大手の日本出版販売がまとめた2024年のベストセラー(集計期間は2023年11月22日~2024年11月19日)は、1位が雨欠『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社)で、5位にその1作目となる雨欠『変な家』(飛鳥新書)が入って2024年の書店を賑わせた。丸善ジュンク堂書店の売上でも、飛鳥新社は2023年の109位から2024年は65位へと大躍進して結果を見せた。
他の躍進勢では、日販のベストセラーの総合部門で14位、単行本ビジネス部門で2位に森永卓郎の『書いてはいけない』(三五館新社発行/フォレスト出版発売)が入ったフォレスト出版が、2023年の101位から2024年は79位に上がった。同じ単行本ビジネス部門の9位に山本渉『任せるコツ』(すばる舎)、10位に永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)が入ったすばる舎も、98位から77位へと上昇した。
こうした分かりやすいベストセラーがあれば、KADOKAWAの初の1位奪取もうなずける。日販のベストセラーの総合ランキングでは、9位に柴田ケイコ『パンどろぼうとほっかほっカー」(KADOKAWA)、11位に柴田圭子『パンどろぼう』(KADOKAWA)、13位に柴田圭子『パンどろぼうとりんごかめん』(KADOKAWA)が並んでおり、何らかの貢献はしたと言えそう。だが、新刊が常に登場し、冊数も出るコミック部門や文庫部門では、10位以内にKADOKAWAの名前はない。
もっとも、講談社も総合部門では黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社)が19位に入った程度。コミック部門でも、集英社の本が8位までに7作入り、6位に山田鐘人、アベツカサの『葬送のフリーレン12』(小学館)が入ったその下で、9位に伏瀬の原作を川上泰樹がコミカライズした『転生したらスライムだった件25』(講談社)、10位に金城宗幸、ノ村優介『ブルーロック27』(講談社)といった並び。これで丸善ジュンク堂書店の売上げで2位に入るということは、ランキングの上位に並ぶような突出したベストセラーより、トータルで市場を獲得できる総合出版社としての強みが発揮されたということだろう。
KADOKAWA躍進の原動力は?
KADOKAWAの場合も、日販やトーハンのベストセラーランキングを賑わす作品こそなくても、ライトノベルで衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ』(MF文庫J)のシリーズであったり、逢沢大介『陰の実力者になりたくて』(KADOKAWA)であったり、燦々SUN『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(スニーカー文庫)であったりと、ライトノベルの分野でベストセラーの上位を占めそうな作品がいくつもある。単行本の実用書でも、まるみキッチン『やる気1%ごはん テキトーでも美味しくつくれる悶絶レシピ500』(KADOKAWA)や『弁当にも使える やる気1%ごはん作りおき ソッコー常備菜500』(KADOKAWA)が人気だったようだ。
児童書では、日販のベストセラーランキングで10位までのうち6冊を、『パンどろぼう』のシリーズが占めた。丸善ジュンク堂書店の売上げランキングでは含まれないらしい雑誌も、『ダ・ヴィンチ』『月刊ザ・テレビジョン』のような情報誌から『3分クッキング』のような実用誌、『ファミ通』に代表されるゲーム誌、そしてアニメ誌ではトップの『ニュータイプ』と広い層が情報を求めて購入しそうなものを揃えている。こうした多彩なポートフォリオを持つことが、コミックに強い集英社や小学館を上回る規模の出版社へとKADOKAWAを押し上げ、同じようにトータルで展開している講談社に並ぶ存在にしたのかもしれない。