米クランチロール社、北米で日本漫画配信サービス開始へ MANGA総合研究所所長が予測する海外展開の好影響

海外配信の足枷となっていた大きな課題とは
今まで出版社の垣根を超えて数多くの作品を取り扱う電子書店が存在できなかった背景には「根本的な話として、漫画のデジタルによる海外配信には大きな課題が2つあった」と菊池氏は分析する。
「一つは、どこかが新しく進出しようとしても版権の問題などがあり、総合書店として多くの作品を取り扱うのが難しかったという、どちらかというと内向きな理由。
そしてもう一つが海賊版サイトの問題です。日本においては海賊版サイトに対して、かなり徹底してあらゆる面で様々な対策が講じられていることが、電子コミックサイト・漫画アプリがここまで発展した一因なのですが、日本語以外の言語帯の海賊版に関しては未だ対処法が確立していないという問題がありました。現在は、英語版の海賊版と、版権者側の戦いがかなり熾烈になってきています。
電子コミックで進出するということは海賊版と戦うということも意味するので、今まではどうしようもないとも思っていたのですが、comeso社が提供する海賊版サイトの検索除外サービスが運用されるなど、ついに『実害も大きく出ているが、対処の方向も見えてきた』というところまで来ました」(菊池氏)
海賊版との戦いはいたちごっことも言うが、一つ明るいニュースと言えそうだ。comeso社のサービスについてなど、米国における漫画海賊版の実情については昨年11月にIMART主催で行われたトークセッション「MANGAPlaza(コミックシーモア)米国展開の海賊版実例と対策2024年版」(https://imart.tokyo/ss-2024-11-14-1830)にてかなり詳しく語られている。業界の動きに興味のある方はチェックしてみよう。(トークセッション購入ページ:https://imart2024.peatix.com/)
「海外で日本の紙の漫画の売り上げが上がっていることや、日本国内のデジタル市場が停滞し始めていることなど様々な要素から、今後一気に海外に展開されていく可能性があり、今回のクランチロール社のニュースは機が熟している感があります。
今後、様々な作品が実際にAmazonなどの総合書店以外でも取り扱われるようになれば、海賊版の問題も当然今より逼迫しますので、対策が進む可能性も上がってくるでしょう。特に日本人が海外で対策するのと、英語圏の大きな会社が海外で自分たちのビジネスに関係のある言語で対処するのとでは全然違うので、そこは大きいと思います」(菊池氏)