『アオアシ』連載10年でいよいよ最終回へ 「サッカー漫画の金字塔」と呼ばれる理由とは?
人間ドラマとしての読み味の深さ
もう1つ見逃せないのが『アオアシ』の人間ドラマとしての深みだろう。エスペリオンユースチームで揉まれ、サッカーにのめり込んでいく葦人。時に危うい精神状態となりながらも突き進んでいく最中、かつて将来を嘱望されながら怪我により引退を余儀なくされた福田達也を兄に持つ一条花(いちじょうはな)の存在感は作中でも際立つ。
物語の要所で葦人に放つ花の言葉が記憶に深く刻み込まれている読者も少なくないだろう。「頑張れ、負けるな、力の限り」。葦人の中で段々と花の存在が大きくなっていく過程にも注目して欲しい。花をはじめとした葦人を取り巻く様々なキャラクターとの関係性も見逃せない。
普段はおちゃらけているがいざというときに頼りになるチームメイト大友の存在や、3巻で葦人が地元愛媛を離れる際の電車の中で母親からの手紙を読んで号泣するシーン。そして最強のユースチーム東京シティ・エスペリオンユースを支える福田達也が放つ選手の琴線に触れる言葉の数々。度々心を揺さぶられる瞬間が訪れる『アオアシ』という作品と共に読者も成長してこれたような想いにさせてくれる、そんな10年だった。
作品が完結を迎える寂しさはやはり拭えないが、最後の最後まで葦人達がピッチで躍動する、世界を驚かせるサッカーを一読者として堪能したい。