アオアシ、ジャイキリ、ブルーロック……人気漫画から考える、躍進続く日本サッカーの“世界との距離”
幾度となく阻まれ続けてきたアジア予選を突破し、1998年に初めてW杯に出場してから四半世紀。日本サッカー界は飛躍的な進化を遂げたといって差し支えないだろう。
1998年W杯当時の日本代表選手は、全員が国内リーグ所属の選手だった。対して2022年カタールW杯で最終登録された26名のうち、実に19名が海外リーグ所属である。かつて欧州のトップリーグで日本人選手がプレイすることは稀であり、夢とも言えたことだが、それが当たり前の時代になった。
この潮流は、近年話題のサッカー漫画においても顕著に現れている。本記事では、サッカー漫画における日本と海外との距離の描かれ方について考えていきたい。
スペインリーグで結果を出した福田達也の若き日の姿が描かれる『アオアシ』
まずはJリーグユースチームを舞台とした『アオアシ』を例に挙げていこう。Jリーグの強豪チーム東京シティ・エスペリオンのユースチームに所属する主人公、青井葦人がプロを目指し成長する過程が描かれる物語だ。
その葦人に多大なる影響を与えた人物こそがエスペリオンユースを率いる監督、福田達也である。
福田は過去にスペイン1部リーグ・サバデルというチームに1シーズンのみ在籍した過去を持つ。そこでリーグ下位に沈むサバデルを救う大車輪の活躍を見せ、日本人がサッカー大国スペインでも十二分に闘えることを証明してみせた。
後に続く日本人選手達に道を示した福田は、大活躍を見せたスペインリーグの最終戦で左膝に大怪我を負ってしまい、志半ばでピッチから去ることになるが、それでも世界との距離を縮めたパイオニアとしての貢献度は計り知れない。
将来を嘱望される選手が怪我で若くして引退後監督に転向した、といえばかつて日本を沸かせたプレーヤーが海外クラブで監督としてのキャリアを積んでJクラブで指揮を取ることになる『GIANT KILLING』の達海猛を思い浮かべる読者も多いのではないだろうか。
彼もまたクラブの英雄であり、日本代表の新たなスターとしてサッカーファンの期待を一身に背負い挑んだイングランド・プレミアリーグへの移籍直後に怪我の憂き目に遭い、現役引退を余儀なくされている。
やがてイングランド5部リーグのアマチュアチームを、1部のプロチームもエントリーされるカップ戦でベスト32まで勝ち上がらせ、その手腕を評価された達海。熱烈なオファーを受け、リーグ1部に所属するも万年降格争いを繰り返していた、かつて自身も所属していたチーム「イースト・トーキョー・ユナイテッド」通称ETUで指揮を取ることになる。達海監督の元で快進撃を続けるETU の中で特にブレイクした選手が弱冠20歳の椿大介だ。
クラブでの活躍が認められ、A代表にも選ばれるようになる椿。親善試合でウルグアイの若きスーパースター、アルバロと対峙し互角の闘いを演じるなど海外のトップリーグで活躍する選手と対峙しても遜色ないプレーをする椿。海外が手に届く距離にある、日本サッカーのレベルは確実に上がっているのだという印象を読者に与えてくれているように筆者には感じ取れた。
世界のトッププレーヤーと対峙するシーンが描かれる『ブルーロック』
全国の優秀なプレーヤー300人を集め、世界一のストライカーを育成するプロジェクトであり、史上最もイカれたサッカー漫画と評される『ブルーロック』においてはより世界との距離の変容を感じさせる展開が顕著である。
ネオ・エゴイストリーグと呼ばれる、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスのヨーロッパ5大リーグを代表する強豪5チームが登場。本作の主人公である潔世一を初め、ブルーロックプロジェクトを勝ち上がった各メンバーがそれぞれのチームを選択し、ワールドクラスを肌で体感しながら加速度的に成長していく展開が描かれている。
このリーグで活躍すれば直接ビッグクラブからスカウトされる可能性があることも明言されており、日本人がビッグクラブでプレーすることが決して珍しいことではなくなった現代サッカー界を象徴している展開といえるだろう。