日本サッカーは漫画で変わる? W杯優勝への方程式は『キャプテン翼』×『アオアシ』×『ブルーロック』だ

日本サッカー、W杯優勝への方程式は?

 長年、サッカー後進国と揶揄されながらも1998年に初のW杯出場を果たしたサッカー男子日本代表。その後7大会連続出場を果たし、最高成績はベスト16と予選グループを突破することも珍しくはなくなった。着実に世界と戦えるチームに変貌を遂げていることは周知の事実だろう。

 W杯初出場時の代表メンバーは全員が国内クラブに所属する選手達だった。そこから26年の時を経た現在、海外リーグに籍を置く選手は劇的に増えた。それは2024年10月15日に行われたW杯アジア最終予選オーストラリア戦の招集メンバー27名中実に22名が海外組というデータからも見て取れる。

 また、ビッグクラブと呼ばれる世界でも屈指の強豪チームに所属する日本人選手が現れたことも躍進の1つの理由だろう。そんな日本サッカーの発展に大きく貢献したサッカー漫画が『キャプテン翼』『アオアシ』『ブルーロック』の3作品であると筆者は捉えている。

夢を現実にするイメージを与えてくれた大空翼

 日本サッカーがまだアジアでも遅れを取っていた1981年に連載が開始された『キャプテン翼』(高橋陽一)の存在無くして日本サッカーは語れないだろう。本作の主人公、大空翼はまだ日本人が誰も想像すらしていなかった「日本をW杯で優勝させる」という明確なイメージを小学生の頃から言葉にしていた。優勝どころかW杯出場すら1回も果たせていない時代に、だ。

 大空翼は全国中学生大会を制覇した後、フランス国際Jrユース大会でも日本チームを率いて優勝し、その後15歳で単身ブラジルに渡りプロ選手契約を勝ち取る。さらにその後スペインに渡り名門クラブ「バルセロナ」への入団を果たし、過酷なレギュラー争いの最中で一時期Bチーム落ちを経験するも不屈の闘志で這い上がり、遂にはトップチームでレギュラーポジションを獲得するまでに至った。

 大空翼自身が先陣を切って道を切り開いていく姿を見ることで、夢をより現実に引き寄せるイメージをもたらせてくれたのではないだろうか。実際『キャプテン翼』に影響を受けたと過去のインタビュー等で発言しているプロサッカー選手は数多い。一説には大空翼が中学時代にFWからMFにポジションを移したことが影響し、同じポジションを目指したことから日本には優秀なMFが多いとも言われている。

 日本サッカーの未来への想像力を大きく膨らませてくれた土台となる作品であることは疑いようがない。

サッカーリテラシーの向上に大きく貢献した作品

 続いて紹介したいのは、Jリーグユースを舞台に描いた異色のサッカー漫画『アオアシ』(小林有吾)だ。プロ選手を目指す育成組織であるユースチームに焦点をあてた本作は、これまでサッカーにあまり詳しくなかった読者のサッカーリテラシーの向上に大きく寄与した作品と言えるだろう。

 サイドバックの選手が攻撃時は中盤のポジションであるインサイドハーフの役割を担う「偽サイドバック」や、ピッチを縦に5分割しレーンごとにポジションを取る「5レーン」といったコアなサッカーファンでもなければ耳にしたことがない専門用語も度々登場する本作。

 主人公の青井葦人は元々前線の選手だったが、作中でサイドバックにコンバートされるシーンが描かれ多くの読者から反響を浴びた。激しく上下運動するスタミナとクロスの精度に加え、近年では更に多くの役割を任され一躍注目を集めるサイドバックというポジションに焦点を当てて描かれている点も興味深い。

 また、青井葦人の所属する東京シティ・エスペリオンユースの監督である福田達也はチームを世界一のクラブにする為にユースチーム所属の選手達にも高次元のレベルのサッカーを求め続けている。

 作中で様々描かれる育成視点での選手達の気づきや成長、新たなプレースタイルを身につけていく姿は読者のサッカー理解度を深めることに大きく貢献していると言えるだろう。

 痩せた土地に作物が実らないように、日本という土壌にサッカーが根付いていかなければ更なる日本サッカーの発展はイメージし辛い。『アオアシ』が我々にもたらしてくれる新たな価値は、そのまま日本サッカーを底上げしてくれる原資になるだろう。

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