『アオアシ』ジュニア版が日本サッカーの未来を切り開く? “サッカーIQ”を鍛える人気作の真価

『アオアシ』ジュニア版への期待

 人気サッカー漫画『アオアシ』の「ジュニア版」が魅力的だ。1月18日に最新の21巻&22巻が同時発売された本作は、ふりがな付きで子どもが読みやすく、「アオアシ・ジュニア サッカー教室」と題した解説企画も収録。連載からややタイムラグこそあるが、価格も税込650円と通常版より安く、日本サッカーの今後を背負う少年少女たちが読む漫画として推薦したい作品だ。

 「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の『アオアシ』は、Jリーグの高校生年代となる「Jユース」を舞台に、基礎に難はあるが、ある才能と強い意欲を持った青井葦人の奮闘を描く物語だ。周囲と比較して知識や技術に乏しい主人公のサクセスストーリーだけに、読者にとっても学びが大きい。技術においては「止めて蹴る」、戦術においては基礎となる「トライアングル」の形成から始まり、チームメイトとの相互理解の重要性やトップレベルで活躍するためのメンタルの持ち方など、段階を踏みながら実際の選手やコーチにとっても必要な情報を伝えている。もちろん「漫画として面白い」というのは大前提だが、アニメ版がNHK Eテレで放送されたことからも、教育面での期待が伺える。

 『キャプテン翼』や『ブルーロック』など、ド派手でエンタメ感の強い作品も魅力的だ。こうした作品なら「子ども」に歩み寄る必要はなさそうで、『キャプテン翼』の影響でサッカーをはじめ、スターになった選手は国内外に数知れず、『ブルーロック』に触発されたストライカーも今後、自然と登場するだろう。一方で、そもそも青年誌で連載され、キャラクターたちの驚くべき成長にも根拠を提示するなど、“サッカーIQ”に比重を置いた『アオアシ』は、描かれている年代とは裏腹に大人向けの印象もある。だからこそ「ジュニア版」の価値が高い。

 本作のスタートから惜しまず協力していたのは、ワールドクラスの実力を持ち、川崎フロンターレの一筋で現役生活を終えた元日本代表のスーパースター・中村憲剛。8ページの「アオアシ・ジュニア サッカー教室」企画において、収録されたエピソードに合わせて覚えておくべき技術やマインドの解説を行なっており、最新の21巻ではチームにおけるキャプテンの意義や敗戦の受け止め方、22巻ではJユースと高校サッカーの違いなどに言及している。作品のメッセージを咀嚼しきれない子どもはもちろん、大人のサッカーファンにもうれしい企画だ。

 『キャプテン翼』の影響で、日本に大空翼と同じミッドフィールダーの名プレイヤーが増えた……という説はよく語られるところ。『アオアシ』を読んで育ち、ゲーム全体をコントロールしてしまうようなサッカーIQと情熱を兼ね備えた選手が登場することに期待したい。

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