【漫画試し読み】異世界に転生して、本当にやりたいことって何？　中年男に共感の嵐『異世界道楽に飽きたら』の魅力

『異世界道楽に飽きたら』原作者・三文烏札矢先生インタビュー

ーー異世界でチート能力を手に入れたら、世界を救うよりその世界ならではの「道楽」を追求したい……というのは多くの人が考えることかもしれません。このコンセプトと、結果として主人公が世界に影響を与えていくという物語は、どのように生まれたのでしょうか。

三文烏札矢（以下、三文烏）：強い意志や正義感は必ず実を結ぶわけではなく、悲しいことに失敗して悪影響を及ぼす場合もありますよね。だったら逆に、気まぐれや身勝手であっても、結果的に助かる人もいるんだろうなぁ、といった皮肉めいた考えがきっかけだったと思います。その「気まぐれ」を格好良く言おうとしたら「道楽」になってしまったのです。

ーー『異世界道楽に飽きたら』は無敵の能力を前提に、主人公の「選択」とそれが周囲に与えていく「影響」がドラマチックに描かれた作品と存じます。ハーレム展開も含めたお楽しみの展開と、シリアスな側面も含んだドラマのバランスはどうお考えでしょうか。

三文烏：主人公は飽くまで自分本位なので、相手の気持ちが理解できないし、世界に与える影響にも気づけない。だけど、痕跡はしっかり残っていて、回り回って本人に返ってくる。心に余裕がない主人公に相応しい形で。そんな自業自得さを面白おかしく描きたいので、その深みを出すためにシリアスパートが必要なのだと思います。

ーー縦読みコミック版は非常にテンポがよく、また、ともぞ先生が原案を手掛けたキャラクターもイメージにあった楽しい作品に仕上がっていますね。三文烏先生はどう受け取っていますか？

三文烏：テンポよく進みつつも場の雰囲気がしっかりと伝わってきて、縦読みコミック特有の演出を楽しんでおります。フルカラーなので、ともぞ先生に生み出してもらったヒロインたちの可愛さを存分にアピールできる反面、冴えないおっさん主人公にまで作画コストを使わせてしまい、申し訳ない気分になりますね（笑）。

ーー縦読みコミックはフルカラーで美しく、派手な戦闘や美味しそうな料理、生き生きとしたキャラクターの姿も魅力的です。従来のコマ割り漫画ではなく、現在のトレンドであるwebtoonという表現にどんな印象を持たれていますか。

三文烏：私は堪え性がないので、従来のコマ割り漫画だと先のページやコマに目が向いてしまい、展開を台無しにして後悔することが多いです。縦読みコミックではその心配がなく、作り手が意図する正しい順番と間合いで読み進めることで、より深く作品の面白さを味わえる表現方法だと思います。

ーー序盤から登場する楽しいキャラクターとして、主人公に従属することになった“魔人”であり“愛猫”のキイコ、エンコ、アンコが愛らしく描かれています。出会いもあれば別れもある本作ですが、先生自身のお気に入りキャラは？

三文烏：魔人では無表情系のアンコ、人族でも同系の甘党メイドことエレレ嬢。逆に表情豊かで好奇心旺盛なソマリお嬢様に振り回される日々もきっと楽しいことでしょう。他には、後々登場する健気でヤンデレ気味なベル子。私は幅広い属性に対応していますので、もはやヒロイン全員がお気に入りですね。

ーーちなみに、三文烏先生ご自身が異世界に転生したとしたら、どんな「道楽」を楽しみたいですか？

三文烏：こちらの世界ではまだ解明されていない魔法自体が最高の道楽だと思います。単純に魔法で空を飛ぶだけでも楽しいでしょうからね。他には、主人公と同じ食道楽でしょうか。異世界名物のドラゴンステーキを堪能したいものです。

ーーこれから本作に触れる読者の方々に、一言メッセージをお願いいたします。

三文烏：異世界でしか味わえない道楽を通して、心の余裕とは何であるのか気づいていく駄目で冴えないおっさんと、その身勝手な道楽に翻弄される可愛くも逞しいヒロインたちが織りなす道楽劇を楽しんでいただければ幸いであります！

『異世界道楽に飽きたら』
作品URL：https://www.infos.inc/fandom/comic/hero01/