「今度はスーパーにも」クマが多数出没する秋田県ーー出身ライターが帰省のたびに感じる問題点

■今年もまた秋田県でクマが出現

小池伸介 (著), 澤井俊彦 (写真)『ツキノワグマのすべて: 森と生きる。』(文一総合出版)

  昨年、日本を震撼させたのが“クマ”に関するニュースだった。そして、今年もクマが各地に出没し、人を襲うなどの被害をもたらしている。

  なかでも、昨年もっともクマ出没のニュースが報じられたのは秋田県だったが、今年もやはりクマが出没し、大きな騒動になっている。秋田市土崎港西のスーパーマーケット「いとく土崎みなと店」にクマが現れたニュースは全国に衝撃を与えている。

  クマは体長約1mの成獣とされ、11月30日に男性従業員を襲撃、店内にとどまっていた。クマは肉売り場を荒らした痕跡が見られたという。そして12月2日の午前8時すぎ、設置した罠の箱の中にクマが入っていることが確認された。

■クマが市街地に出現するのは異常

  秋田県は地域によってかなり風土も環境も違う。“なまはげ”は男鹿半島の一部の地域にしか出ないし、きりたんぽを食べる食文化もどちらかといえば県北の地域のほうがなじみ深い。クマに対する印象も、これまでは地域によってだいぶ温度差があった。

  筆者は、山間部が多い秋田県南の羽後町という地域の出身であるが、羽後町はクマがこれまでも毎年出没してきた。子どもの頃から「クマに注意しましょう」と教わってきたし、移動中の車の中からクマを見たことがある人も少なくない。

  ところが、昨年からは秋田県でも人口が多い秋田市の、しかも住宅街に続々とクマが出没し始めたのである。つまり、これまではクマを見かけることが珍しかったエリアでも、クマを見るようになってしまったのだ。

  森の中でも茂みの中でもない、住宅街でクマと遭遇してしまう。ましてやスーパーマーケットで遭遇するのは恐怖でしかない。これは明らかに異常事態と言っていいだろう。

■クマが出現し続ける原因は特定されていない

  これほどまでにクマが住宅街に出現するようになった原因ははっきりとわかっていない。そのため、クマの餌になる柿の木などを伐採したりと、できる範囲内でしか対策を打つことができないのが現状だ。

  秋田県は人口減少率が日本トップクラスであり、過疎化が深刻なレベルで進んでいる。筆者はきのこ狩りが好きなので山によく入るが、過疎化、そして高齢化のために木々の管理が行き届かず、荒れている森が増えたなと感じる。

  人の手が入らなくなったため、かえって森の生態系が乱れてしまい、クマが生息域を広げているのだろうか…などと思ってしまうが、一つの理由ではなく、複合的な要因によるものだろう。クマと共生するにはどうすればいいのか。秋田県内では模索が続いている。

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