好調出版社『アルファポリス』 ベストセラー連発の生え抜き編集者・滝澤友梨に聞く、ヒット量産の秘訣は?

■担当作のアニメ化が見えた!

所属するコミカライズを扱う編集部は18人ほどのチーム。増子真理部長の元で面白い企画や新たなアイデアを提案しやすく風通しの良い部署でヒットを生み出す環境が整っているという

――滝澤さんは入社前から漫画好きだったのですか。

滝澤:大好きでした! 学習塾でも勉強せずに、当時はまっていた『BLEACH』を読んでいたんですよ。それが先生に見つかり、「滝澤さんは机には座っていますが、漫画を読んでいます」と母に報告が行き、めちゃくちゃ怒られたこともあります。

――『BLEACH』ということは、少年漫画がお好きだったのですね。

滝澤:でも、入社後に配属されたのは“異世界物”などを扱う女性向けの部署でした。こういったジャンルを読んでいなかったので、先輩のもとで一から学びましたよ。

――でも、少年漫画好きの趣味が担当作品で活かされる場面もありそうです。

滝澤:『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』は、原作小説を読んだときに、ジャンプ作品に近いものを感じたんです。バトルもありますし、主人公が悪を成敗する『水戸黄門』チックな要素もあるなと。そこで、少年漫画の要素を意識して漫画を作っています。

――『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』は滝澤さんにとって非常に思い出深い作品なのだとか。

滝澤:はじめて漫画家さんに自分からお声がけをして、コミカライズ化した作品です。入社1年目の終わりぐらいに、原作小説を上司から渡され、内容に合う漫画家とコミカライズを進めてほしいと言われました。私は原作を読んで感動し、この作品は絶対売りたいと思いましたね。しかも「うまくいったらアニメ化するかも」と直感的に思ったんです。

――それは凄いですね! もしかして、預言者ですか(笑)!?

滝澤:バトルシーンなどの動きが描ける漫画家さんに頼んだら、絶対に跳ねると確信しました。幸い、画力が高く、バトルシーンが得意なほおのきソラさんにお引き受けいただき、1話のネームを見て、やっぱりこれはアニメ化すると思ったのです。1巻が出たとき、ほおのきさんと原作者の鳳さんに「絶対にアニメ化しますよ」と書いた手紙を添えて献本したのですが、2人とも信じてくれませんでしたね(笑)。

――だからこそ、アニメ化が決まった時は嬉しかったのではないでしょうか。ほおのきさんも、鳳さんも、滝澤さんに感謝しておられるのではないですか。

滝澤:いえいえ、私は感謝されるような立場ではないと思っていて。むしろ、お2人にはこんなに素敵な作品を作ってくださり、ありがとうと言いたいです。ただ、アニメ化の件はもっと早く信じてくれても良かったと思いますけれどね(笑)。

■自分が一番のファンかもしれない

――漫画の編集部を取材すると、近年、マーケティング的な視点を強調されることが増えた印象を受けます。滝澤さんも連載を立ち上げる際、売れ筋を意識することはありますか。

滝澤:私はマーケティングに関しては、まったくしないわけではありませんが、凄くやられている方ほどはやっていないと思います(笑)。うちの部署の主軸はコミカライズです。コミカライズは、ある程度原作小説が売れていてファンの方がいるところからのスタートなので、もともとある程度の読者は確保しているわけです。ただ、私は漫画から入って小説にたどりつく読者が増えるようにと、頑張っています。

――コミカライズは、原作を面白いと思った方が漫画も面白いと思ってくれるかどうかも肝心ですよね。

滝澤:原作が面白かったのに、漫画はイマイチ……と思われたら、残念ですからね。私は、連載を立ち上げる前に、原作ファンが何を面白いと思っているのか、分析します。レビューを徹底的に読み、さらに自分が読んで面白い感じたポイントを2つくらい抜き出します。打ち合わせの際にはそういったポイントを提示し、さらに漫画家さんが面白いと思ったポイントも聞きます。何度も何度も議論し、作品を作り上げていくのです。

――お話を聞くと、滝澤さんは王道な漫画の作り方をしているなと思いました。作家さんと打ち合わせをするときは対面ですか。

滝澤:私は対面派です。喫茶店などで話し合い、その場でネームを書いてもらい、どっちがいいかと選んだりもします。ある作家さんと空港でネームを広げて話し合いをしていたら、周りに子どもたちがやってきたこともありました(笑)。担当している作家さんが都内在住が多いので。喫茶店での打ち合わせは定番。時には散歩しながら考えることもあります。

――歩行によって脳が活性化されるのでしょうか(笑)。

滝澤:展開を考えるときは、アイスのような糖分をとりながら歩くと、アイデアが浮かぶことがありますよ。コミカライズは原作に忠実なパターンもありますが、独自の展開を盛り込むこともあります。原作にちょこっと書かれていたフレーズをもとに、話を膨らませたりもしますね。

■私が惚れ込んだ作品を買ってください!

――滝澤さんにとって漫画の編集は天職なのではないでしょうか。

滝澤:そうですね。それに、作家さんはみんな圧倒的な才能があって、私を喜ばせてくれる存在です。担当している漫画家さんはなんて素晴らしい方々なんだと思います。新しい表現やちょっとした凝った演出を入れていただいた日には、作家さんに送るLINEにハートの絵文字を入れまくります(笑)。読者目線で見ても、担当した作品は楽しい漫画ばかりです。

――滝澤さんが一番のファンのように感じますね。仕事が推し活のようになっているのかなと。

滝澤:自分が好きなものって、他の人にも好きと言ってもらえると嬉しいじゃないですか。だから、映像化も嬉しいし、ランキングで1位になるのも嬉しいんです。

――今後、滝澤さんが生み出していきたい漫画はなんですか。

滝澤:オリジナルですね。コミカライズで関わりのある漫画家さんで、オリジナルを見たい方が何人もいます。コミカライズと並行でもいいので、オリジナルをやってほしい……と打診をして、水面下で進んでいる企画があります。みなさん、ぜひ見かけたときは買ってくださいね! 私が惚れ込んだ才能たちの作品を買ってくれたら本当に嬉しいです!

――熱烈なアピールをありがとうございます(笑)。最後に、この記事の読者にメッセージをお願いします。

滝澤:『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』は、2025年にアニメ化されます。アニメを楽しみにしつつ、これからも原作と漫画を追っていただけますと。原作も漫画も最終章に進み、この先、もっと盛り上がります。スケールがより大きくなりますし、新たなイケメンや面白キャラ、かわいいキャラや魔王なども出きます。そういったキャラたちとスカーレットの関わり合いや、活躍を見ていただけると嬉しいです。

アルファポリスはそれぞれの編集者に裁量を任せ個性を活かすような取り組みが功を奏している。「好き」をとことん突き詰めることができる環境から今後もより多くのヒット作が生まれてくることになりそうだ

 

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