『夏目アラタの結婚』ファンにおすすめしたい、“獄中犯との面会シーン”が見どころの名作たち
9月6日の劇場公開から話題を呼んでいる映画『夏目アラタの結婚』。乃木坂太郎による同盟コミックを原作とする本作の見どころといえば、主人公夏目アラタと“品川ピエロ”の異名で知られる死刑囚・品川真珠との緊迫の面会シーンだ。
外界からの情報が絶たれているため、死刑囚の真珠は面会者を情報収集源に利用し、時には自分の要望通り動いてくれるようメンタルを揺さぶり誘導していく。本稿では、面会や取り調べシーンなどの心理戦が見応えのある作品を紹介したい。
『ゆれる』面会室の中で兄と弟の思惑が交錯する名作 幼なじみの死の真相の行方は?
1作目は、2006年に劇場公開されて国内の映画賞を総なめにし、西川美和の監督としての知名度をワールドワイドに押し上げた映画『ゆれる』だ。西川監督本人によるノベライズ版も人気を博している。
本作は、東京で写真家として成功し帰省した主人公の猛が、田舎でガソリンスタンドを経営する物静かな兄·稔と幼なじみの女性と3人で渓谷に行った際に、幼なじみが吊り橋から落下して死亡。その裁判の中で、猛が兄との長年の確執や自身の家族感を見つめ直すというストーリーだ。冒頭こそ猛の帰省に関するシーンが登場するが、物語は稔の裁判シーンと兄弟の面会シーンがメインで構成され、幼馴染が死亡する吊り橋シーンは、事件と事故の両方の可能性が描かれる。
本作でオダギリジョーが演じる猛は自信家で自由奔放。帰省当初は、田舎で真面目に家業を継いで暮らす兄に負い目を感じつつ内心馬鹿にしているのだが、実はそれを兄からは見透かされていたことが、後半の面会シーンで明らかになる。物静かで真面目だけが取り柄の人間だと思っていた兄から、カウンターパンチを喰らって裏切られた気持ちになった猛は、次第に兄に不利な証言をするようになっていく……。
幼なじみの死亡は本当に事故だったのか、それとも事件なのか? 本人たちの記憶と兄弟間の確執や葛藤、そして、稔の供述や猛の記憶に沿って事件と事故両方の可能性で何度も描き出される吊り橋シーン。何度でも観返したくなる名作だ。