羽賀研二とともに副会長逮捕で話題「日本司法書士会連合会」はどんな組織? 弁護士が語るその役割と“動機”への疑問
元タレントの羽賀研二(本名:當眞美喜男)容疑者が9月25日、強制執行妨害などの疑いで愛知県警に逮捕された。羽賀容疑者は過去に実刑判決を受けた詐欺事件の賠償弁済を回避する目的で、昨年6月、沖縄県内に所有する不動産について所有者が自身の会社に移ったとする虚偽の登記を行なった疑いを持たれている。
Netflixドラマの大ヒットをきっかけに「地面師」という言葉がトレンドになり、同名のクライムノベルにも注目が集まる中で報じられた「不動産登記」をめぐる事件。そのタイムリーすぎる内容とともに話題を集めているのは、関連の逮捕者に「日本司法書士会連合会 副会長」(野崎史生容疑者)の名前があることだ。
その名称から“司法書士の顔”にも見える「日本司法書士会連合会」の要職にある人物が逮捕されたことは大きなスキャンダルになっているが、同連合会は実際、どんな団体なのか。小杉・吉田法律事務所の小杉俊介弁護士が語る。
「日本司法書士会連合会は司法書士法によって定められた強制加入団体であり、簡単に言えば、加入していなければ司法書士として働くことができません。最初に誤解なきよう申し上げると、あくまで個々の司法書士が登録している団体に過ぎず、司法書士業務を日頃から連携して行なっているわけではない。会長・副会長といっても、役員と会員との間に上下関係や指揮命令関係があるわけではありません。これは弁護士が所属する日本弁護士連合会も同様です。今回の事件について、会としての組織的な関与はそもそもあり得ないことは念のため強調しておきたいです」(小杉氏)
そもそも司法書士は不動産登記に関して、どんな業務を行なっているのか。そして、虚偽の資料を見抜くのは難しい、あるいはその気になれば容易に不正な申請をできてしまうものなのだろうかーー。
「司法書士は法律事務の専門家で、不動産登記についても契約書、登記申請書の作成から代理申請まで広く対応しています。弁護士も法律上、登記申請代理業務を行なうことも権限上は可能ですが、登記について専門的な知識を持ち、実務経験が豊富な司法書士に代行してもらうのが一般的です。
申請に必要な書類がきちんと整っていたなら、それが虚偽の登記だと見抜くのは司法書士でも難しい。さらに今回の場合、第三者ではなく羽賀容疑者本人が代表を務める会社への登記変更ということもあり、“財産隠しのため”という事情を知らなければ不自然に思わなくてもおかしくありません。なので、現在報道されている以上の背景があるのだろうとは思います」(小杉氏)
SNSではドラマ『地面師たち』でピエール瀧が演じた、元司法書士の詐欺グループメンバーと、野崎容疑者を重ねるポストも目立つ。不正な不動産登記に対して、専門家としての積極的な関与があったことが疑われる状況だが、そう仮定した場合に、小杉氏の周囲では「動機」への疑問が広がっているという。
「第一報だけでは、本件は業界の要職に就くような人物にとって金銭的なメリットが大きいとは思えず、なぜこのようなリスクを取るに至ったのかが分かりません。憶測でものは言えませんが、より複雑な要因・利害関係がある可能性も考えられるところです」(小杉氏)
ドラマ『地面師たち』で描かれた事件とは規模にも内容にも違いがあるが、本件では元人気タレントの羽賀研二容疑者をはじめ、現職の日本司法書士会連合会副会長のほか暴力団関係者も逮捕されており、“役者”がそろってしまっている状況だ。早期の全容解明が求められる。