『呪術廻戦』完結間際でまさかの“反省会”回!? 賛否両論も鬼才・芥見下々の手腕に脱帽

※本稿は『呪術廻戦』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。

 「週刊少年ジャンプ」で連載の人気漫画『呪術廻戦』が、9月17日発売号に掲載された最新話で、完結まであと2回を残すのみとなった。さまざまな意味で人を食った怪作と言える同作がどんな形で完結を迎えるのか注目が集まるが、そんななかで登場人物たちの「反省会」が行われたことが話題になっている。

 具体的なネタバレは控えるが、日本中の漫画好きが固唾を飲んで見守った最終決戦について、当事者たちが侃侃諤諤の議論を交わしている。例えば、なぜ明らかに必勝と思われる「あの技とあの技の組み合わせ」を使わなかったのか……という、考察好きの読者から出てきそうな意見も噴出。なるほどと膝を打つ回答が用意されているものもあれば、皆一様に「それはそう」と複雑な思いにとらわれる場面もあった。

 SNSでは、「ネットで好きなように言われて、作者も一言返したくなったのだろう」という趣旨のコメントが散見され、「蛇足だ」と捉える人もいれば、「これも『呪術廻戦』の面白さだ」と楽しむ人もいて、賛否両論。未回収の伏線(らしきもの)が少なからず残っているなかで、不意に挿入された「反省会」に気が抜けてしまった読者がいることは容易に想像できるが、鬼才・芥見下々の作品を深く味わうなら、この“呪術らしさ”を満喫するのがいいだろう。

 そもそも『呪術廻戦』という作品は、「必殺技(術式)の説明を本人がする」という、本来ツッコミどころのあるバトル漫画のお約束をメタ的な視点から捉え直し、「自らカラクリを明かす」というリスクが術式の効果を向上させるという設定を導入していた。また最終局面においても、大真面目なバトルの中に「裁判」や「お笑い」の要素を交えたメタ的/ゲーム的な攻防を取り入れ、「バトル漫画」の枠を飛び越えた知的な遊びを提供していた。

 もともとそうしたメタな視点を活かした作品だけに、今回の「反省会」もその内容を噛み締めたくなるところだ。多種多様な能力が存在する作品において、読者という“神の視点”から見れば「この能力をこう使えば無敵じゃない?」という発想は生じ得るもの。しかし、作中の人物がどれだけ考え、その選択をしたのかということがわかれば、読者にとっての作品の穴が埋まるとともに、バトルの解像度も上がる。今回の「反省会」は、読者にもストレスがかかる激しい最終決戦を読み返すいいきっかけにもなるだろう。

 『呪術廻戦』とバトンタッチをするように戻ってくる人気作『HUNTER×HUNTER』も、知的好奇心をくすぐる異能バトルという共通点がある。両作品とも、少年漫画としては複雑な設定と、主要キャラクターが突然退場するような残酷さがあり、少年漫画という枠を超えたファンを抱えているが、「何が飛び出すかわからない」という予測不能な緊張感は、『呪術廻戦』に軍配が上がるかもしれない。

 連載は残すところあと2回。『呪術廻戦』がさらに賛否両論を呼ぶ衝撃的な最終回を迎えることに期待したい。

 

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