「激ムズ!」声優・福西勝也 アニメーター仕事に挑戦「線が繋がらない、1本の線になってくれない!」

■アニメーターの仕事ってどんなもの?

  高度なテクニックな要求されるというアニメーターの仕事を、未経験者が実際に体験してみたら、どう感じるのか―― 今回、アニメの業界団体「日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)」の監修のもと、若手声優の福西勝也さんがアニメーター体験に挑戦するというので、取材を行った。

  福西さんが挑戦するのは、NAFCAのオリジナルキャラクター「ほくと」の原画をトレスして、動画に起こす作業。原画は『おジャ魔女どれみ』や『ハートキャッチプリキュア』で知られるアニメーターの馬越嘉彦さんが描いた、とてもかわいらしい絵だ。

  福西さんは小学2年生の頃に声優を志したそうだが、「絵を描いたのは授業中に教科書に落書きした程度」とのことである。また、福西さんは数多くのアニメ作品に出演しているが、実際の制作の現場を見るのは初めてなのだとか。

  今回、福西さんを指導するのはアニメスタジオ「たくらんけ」が誇るベテランアニメーターの江山梨恵さんである。福西さんは『ポケットモンスター』にも出演、スナップ小僧の役を演じているが、たくらんけは同作品の制作に長年関わっているスタジオ。出演した作品の制作現場を訪問し、福西さんも感無量といったところだ。

■原画のトレスは激ムズ!

  さて、トレスとは、読んで字のごとくトレスをする作業だ。つまり、原画の線をなぞる作業というわけである。なぞるだけなら簡単と思いきや、福西さん、さっそく苦戦している様子だ。「線をきれいに引く……って、言うだけなら簡単ですが、かなり難しいですね」と、鉛筆を手に悪戦苦闘。

アニメーターの仕事を体験する声優の福西勝也さん。

 スタジオジブリ作品など、あらゆる作品に動画で参加している江山さんは、「30分のテレビアニメはなんと5000~8000枚の原画が必要になります。ベテランのアニメーターは30分で1枚の動画を仕上げていきます。新人は約60分かな」と話す。

トレスを行う絵はNAFCAのオリジナルキャラクター「ほくと」の原画。

 したがって、いかに早く、そして美しくトレスするかがアニメーターの腕の見せ所というわけだが、「線の太さが全然違ってきてしまう!」と福西さんが叫ぶように、一朝一夕では身につく技術ではないそうだ。

トレス台を使い、原画の線をなぞっていく。なぞるだけ……と思いきや、これが想像以上に難しいのである。

 「できるだけ、原画のかわいい“チュン!”とはねた髪の毛やまつげを、かわいいままで残したいけれど……無理だなあ~! 線が繋がらないし、1本の線になってくれないっ!」

  じつは、馬越さんの原画は勢いのある線で描かれているので、ベテランのアニメーターでもトレスが難しいそうだ。江山さんがこう話す。

 「原画を担当するアニメーターはラフな感じで描くことも多く、線が繋がっていなかったり、重なっていることもよくあります。それを整理してきれいな一本の線にするのが、動画の仕事です。馬越さんの絵のかわいさをいかに残すか、考えながら線を引かないと、まったく違う絵になってしまうんですよ」

アドバイスを行う江山梨恵さんは、数々の名作アニメに関わってきた超ベテランアニメーターであり、動画のスペシャリストである。

  その言葉を受けて、福西さんは「“二次元を愛する者”として、元の絵の素晴らしさ、最大限の魅力を引き出せないまま納品するのは苦しい……!」と、まさにアニメーターになった気分で心情を吐露していた。

江山さんが40年培った超絶テクニックを披露。江山さんはとにかく作業スピードが速いだけでなく、描く線がとても美しい。
新人のアニメーターには線を描く練習をしてもらうという江山さん。「野球の素振りと走り込みに近く、手に覚えさせることが大事」なのだそう。江山さんの手にかかれば、太い線も細い線も、直線も曲線も自由自在である。
上は馬越嘉彦さんが描いた原画で、下は江山さんがトレスした動画。かわいらしさをしっかり活かした線になっているのがわかる。
福西さんのトレスが完成。福西さんはドッと疲れた様子だったが、江山さんは「初めてなのに上手い!」と絶賛。

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