【漫画】深まる謎とまとわりつくような恐怖……ホラー小説の漫画化『とある峠道に存在した石塔の話』の絶望感
――本作の反響はいかがですか?
古河コビー(以下、古河):1話毎に独立したエピソードなのですが、単行本で6話繋げて読むと繋がっていることがわかる構造になっています。読者さんからは「各話は謎が多いけど、最後まで読むと腑に落ちる」というような声がありました。『とある峠道に存在した石塔の話』は私自身も書きながら、一番難解だなと感じた回です。
――コミカライズはどんな経緯だったのでしょう。
古河:以前「ゲッサン」で、怪談風の読切作品『「ん」から始まる名前の子』を描いたんです。これを見つけてくれた編集さんが声をかけてくれました。実際に原作を読んでみたら、一般的なホラーにはない「この絶望は受け入れるしかないよね……」といった読後感。
お化けが出てくるのではなく淡々と進む印象でしたね。個人的には映画『千と千尋の神隠し』における電車の場面のような、美しいけど抗えない死に向かっていくようなイメージを想起しました。
――作品とは裏腹に、古河さん自身は笑顔で明るい印象を受けました。
古河:ありがとうございます(笑)。ただの暗い話だとも思ってなくて、「こういう輪廻転生もあるよね」と考えながら描いていました。今は異世界転生して無双する作品が多いので、こういう死生観もいいかなと。
――原作者と作画でどのようなやりとりを?
古河:最初だけ、ネーム担当の方と梨さんに解釈のすり合わせをしました。私は全体も2~3周読んでから臨みましたが、三者三様の意見で驚いたのを覚えています(笑)。だから読者の方を含めると、さらに色々な考え方があると思うんですよ。ただ「私はこう捉えました」という形でまとめたのが『漫画版6』になっています。
基本的に自由に描かせてもらっていますが、「キャラクターの感情を抑えて」や「グロくしないで」といったディレクションはありましたね。それを受けて、表情を無にしていった感じでした。
――キャラクターデザインについてはいかがですか。
古河:個人的にキャラデザは一番好きな作業のひとつです。自分の創作では覚えてもらえる髪型などを意識しますが、本作は「どこにでもいる普通の人にしてほしい」という要望があり、あえて作り込んだりはしませんでした。
――古河さん自身は「脱サラ新人漫画家」と自称されていますが、それについても聞きたいです。
古河:もともと大学生時代に描いていたんですが、デビューできずに就職。会社員時代は残業で描く時間もなく、毎日会社で泣いていて。漫画を再び描き始めたのはコロナ禍で週1出勤になった時でした。
退職した今は気が楽で仕事も楽しいし、もう会社員には戻れません(笑)。好きなことが仕事だと寝不足でも頑張れますね。今は初めての連載の準備をしているのですが、そのきっかけを作ってくれたのが『漫画版6』だったんです。
――影響を受けた作家や作品は?
古河:雷句誠さんの『金色のガッシュ!!』で漫画を知って、映画『千と千尋の神隠し』にも大きなインパクトを受けました。
――今後どんな漫画家になりたいですか?
古河:世界を含めたオリジナル設定のファンタジー物を、いつか描いてみたいと思っています。