話題のレシピ本『1週間2000円ひとり暮らしごはん』著者・Hana「節約=我慢のイメージを払拭したかった」

話題のレシピ本『1週間2000円ひとり暮らしごはん』著者・Hana「節約=我慢のイメージを払拭したかった」

 わずか1年弱でフォロワー数が27万人にも達した大人気のYouTubeチャンネル「ハナの暮らし」を運営するHanaさんによる初の著書『1週間2000円ひとり暮らしごはん』(ナツメ社)が大人気だ。Hanaさんが動画で公開している2000円で1週間の3食レシピを作る内容がわかりやすく紹介されており、2024年5月の発売から3度の重版がかかるほど、すでにベストセラーとなっている。

  今回、そんなHanaさん本人にインタビューを実施。動画の制作についての2000円レシピの裏側や節約を楽しむポイント、書籍に込めた思いや活用方法など、さまざまに話を聞いた。

■手取り16万・ボーナスなしの生活

初の著書『1週間2000円ひとり暮らしごはん』が好調な売れ行きとなっているHana氏に本書にかけた思いなど制作経緯を聞いた。

――『1週間2000円ひとり暮らしごはん』のレシピはどれも「本当に2000円⁉ 3食×7日間で⁉」と驚くほどのレパートリーで、量もしっかりありますよね。

Hana:ありがとうございます。社会人になるまで実家暮らしで、自炊をしっかりする機会はあまりありませんでした。就職して家を出て、初任給はなんと手取り16万・ボーナスはなし。毎日ランチに行くわけにもいかず、自ずとお弁当を作って職場に持参するようになりました。レシピもなく炒めただけのおかずとか、おにぎりとか。でも、それがランチだと全然、食べるのが楽しみになれなくて……。

――お昼ごはんが楽しみじゃないと、それだけでテンション下がりますよね。

Hana:そうなんです。夜も疲れ切って帰ってきて、納豆とお味噌汁とごはんだけ、という生活を送っていました。でも、そんな食生活では、仕事で疲れた体や心を労わることもできず……せっかく作るのなら、美味しいものを作ろうと考えるようになり、少しずつ母にLINEでレシピを聞いて、実家で食べていた料理を作るようになりました。

■1年弱でYouTube登録者数20万人を達成できた理由は?

――YouTubeをはじめたのはなぜだったんでしょう。

Hana:会社で稼ぐお金だけでは、生活はできるけど、自分のしたいことをするのは厳しいという現実がありました。20代前半の私は、やりたいことも、行きたい場所もたくさん! 会社のお給料が低いのはどうにもできないけれど、自分で稼ぐ力なら、自分が頑張ればどうにかなるかも? と思い、SNSを始めました。あとは、やるなら自分の好きなことをやりたい! という気持ちがあったので、ずっと好きだった「動画」と得意になりたい「料理」を掛け合わせて、コンテンツ作りを始めたんです。

――それから1年弱で登録者数20万人を達成。すさまじい人気上昇ぶりです。

Hana:自分でもいまだに信じられないのですが……本当にありがたいことに、たくさんの方々に見ていただけるようになりました。YouTubeを始める時に、やるからには最初の1年で銀の楯(チャンネル登録者10万人を達成すると授与されるもの)をもらえるくらいまで頑張ろうと思って、毎日投稿することにしたんです。いちばん最初の動画は「寝れない夜にはパンを焼こう」っていう、今見ると「ああ、この頃私仕事が辛かったんだなあ」って分かるくらい暗い動画なんですけど(笑)。当時、仕事がけっこうしんどくて、目を瞑ると涙が流れてくる時期があったんです。でも、ひとり暮らしだとそんな気持ちを話す相手もいなくて……。「毎日がんばってまーす、生きてまーす」って想いを誰かに聞いてほしくて動画を作りました。そしたら、思いのほか、そういう私の言葉に共感してくれる人が多かったんです。

――ああ、だからほかの動画でも語りかけることが多いんですね。

Hana:私自身、YouTubeなどで動画を観るとき、その人が何者かということより、その人自身の考え方やものの見方が好きだから、という理由でチャンネル登録することが多いんですよね。はじめて2~3カ月くらいでショート動画の再生数がぐっと増えたのも、私自身の嘘偽りない、ありのままの感情や想いを観ている人が感じ取ってくれたからだと思います。

――無数に情報が溢れているなかで、けっきょく大事なのは、自分が「好き」になれるかどうかだったりしますよね。

Hana:そうですね。ソーシャルメディアは、短いコンテンツの連続の中で人と人とが繋がる場所です。なので、どんな小さな投稿でも、コメントの返信でも、自分の想いを正直に伝えることを常に意識しています。誰かの心に触れるコンテンツを作るには、私自身が心を込めて作らなきゃと、日々思っています。

■1週間の献立の考え方は?

『1週間2000円ひとり暮らしごはん』の中面より。どのレシピも節約というイメージを覆してくれる紙面構成で見ているだけでも楽しくなる。

――2000円で1週間というのは、やっぱり大変じゃないですか?

 もともと、何も考えずに1週間分の食材を買うと、2500円くらいだったんですよ。だったら、少し工夫すれば2000円におさえられるのでは? と思ったのが値段設定のきっかけでした。あと、節約レシピを検索すると、もやしなどの単価が安い食材しか使えなかったり、パスタや丼ものなど炭水化物メインだったりすることが多かったんですが、健康のためにもしっかりタンパク質はとりたかったし、自分のテンションを上げるためにも彩りのある献立にしたかったんですよね。

 そうしているうちに、2000円という制限があるからこそのアイデアもどんどん湧いてきて……2000円で献立を考えるのが楽しくなっていったんです。

――献立はどんなふうに考えているんですか?

朝・昼・夜、3食の1週間献立の一例。バラエティに富んでいて、長く楽しめる保存版の内容。

Hana:日曜日の朝に7日分のメインを考えています。そして、それに必要な材料を書きだして、その材料を使ってほかに何を作れるか、冷蔵庫には何が残っているか、予算内で何を買い足せるかを考えて……って、パズルみたいにいろいろ組み合わせながら2000円以内で最適解を見つける感じです。

――それは経験値が必要になりますね。

Hana:最初は、同じものを作るしかなくて絶望していたし、レパートリーも少なければ、おやつを買う余裕もなくて……。でも、料理を続けていく中で頭のなかにレシピのストックが増え、ひらめきも増えて、おもしろくなっていったんです。今は、料理をするよりも献立を考えるほうが楽しいくらい(笑)。

――ひとり暮らしを始める前から、食生活に気を遣うほうではあったんですか?

Hana:もともと、管理栄養士になりたかったんですよ。高校生の頃、祖父が大腸がんで入院したときにお見舞いに行ったら、病院食で大きなトンカツが出されていたんですね。祖父は食欲がなくて、「これは食べられない」と、笑いながら言っていて。それを見た時に、あんなに元気だった祖父が食事をしたがらないことにショックと無力さを感じたんです。弱ってきている祖父に残された食事の時間は長くないからこそ、こんな状態の祖父が「食べたいかも」と、思えるものが出されていたらいいのになぁと思い、家に帰ってすぐ「病院食  作っている人 仕事」と検索して、管理栄養士の存在を知りました。

 でも、管理栄養士になる夢は叶わず……結局農学部に進学しました。祖父が趣味で耕していた畑で、子どもの頃から一緒に作業していたので、授業よりも畑での実習が多い学部がいいな、と滑り止めで受けていたんです。

――どちらにせよ、おじいさまの影響が大きいんですね。先ほど、ひとり暮らしをはじめた頃にお母さまがレシピを送ってくれたと伺いました。本書ではご家族のレシピの他に、どんなものを参考にしているんですか?

Hana:図書館に行くのが昔から大好きで、昔のレシピ本や海外のレシピ本を眺めるのが好きです。料理にもやっぱり流行があって、ネットで検索しても似たようなレシピばかりが出てきてしまうんですよ。でも、昔の本や海外のレシピ本では、見たことがない食材の組み合わせが書かれていたり、盛り付けも今とは全然違っていたりして、図鑑のような感覚で読んでいます。

――何か面白かったレシピはありますか?

Hana:最近見た昔のレシピ本に「カレーがごちそう」みたいな特集ページがあって、次の日にジャガイモをたしてコロッケにしたら子どもたちが大喜び、って書いてあったんですよ。言われてみれば確かに! って感じなんですけど、カレーをコロッケにする発想はなかったなあって思いました。カレーコロッケが作れるなら、ミートドリアコロッケもできるなあとか、レシピそのものだけでなく、発想のヒントももらっているという感じです。

■節約=我慢のイメージをくつがえしたい

難しいイメージのあるチキン南蛮も、Hana氏のレシピは簡単でボリュームもあり、見た目も美味しそうになる。

――レシピ本にも「ブン・チャー(ベトナム)」や「ガパオライス(タイ)」、「キャロットスープ(ポルトガル)」など、海外の料理がいろいろ掲載されていますよね。ベーグルやチャバタ、シナモンロールなどパンのレシピもたくさんあって、これまでの節約レシピではあまりみなかったなと。

Hana:私の本で紹介しているレシピは、基本的にどのスーパーで買っても安い食材で構成しています。安い食材を組み合わせて「意外といけるんだ!」という発見も楽しくて。たとえばチキン南蛮は、難しそうと思っていたんですけど、揚げずに焼いて作れるかも? とやってみたら案外美味しくできて。鶏のむね肉と卵、それから定番の調味料さえあれば作れるので、料理があまり好きじゃない方でも、簡単に挑戦できると思います。

――レシピに使う調味料の種類が少ないのも、いいですよね。

Hana:料理を始めたての時って、まず調味料をそろえなきゃいけないじゃないですか。だから、できるだけ増やさず、どこでも手に入るもので、何にでも使えるものを使うようにしています。

――レシピ本のまえがきに「節約=我慢のイメージだけど、みんなに我慢をしてほしくはない」「節約から得られるスキルとパワーで毎日をキラキラさせることはできる」とありました。

Hana:はい。その想いがあったので、4章にはたっての希望で「気分で選ぶとっておきごはんとおやつ」というパートを設けていただきました。「たくさん頑張った日」「海外に行きたいとき」「落ち込んだ日」といったシチュエーション別のレシピを入れて、読む人が自分の気分に合わせて料理を選べるようにしています。

――料理に関すること以外で、Hanaさん自身が節約から得られたスキルは、ありますか?

Hana:いちばんは、継続することが好きになりました。もともと、生まれたときから反抗期と言われるくらい、ルールを守ったり、規則正しい生活をしたりすることが苦手だったんです。でも、献立を考えるようになってからは、行き当たりばったりが大好きだった私が、先々の予定を立てることを楽しむようになりました。限られた予算・時間の中でも、自分ができることを一生懸命こなしていく。どんな場所に置かれたとしても、その状況を楽しみながら、挑戦する。そんなマインドが身についたと思います。ないことを嘆くより、自分で生み出せる最大限を考える! って感じですね。

■お役に立てることがうれしい

――今後、挑戦したいことはありますか?

Hana:実は、自分が“こんなのあったらいいな”と長年思ってきたキッチングッズを作るために、会社を設立しました。第一弾はこれから販売する予定の「献立ノート」です。これまで献立を考えるときはノートの切れ端やチラシの裏を使っていたんですけど、これも蓄積すればみんなが繰り返し使えるレシピになるよなあ、と思って、私にとっていちばん使い勝手のいい献立ノートを今、制作しています。

  献立ノートに書いた内容を、毎週日曜の朝にインスタグラムのストーリーに投稿しているんですけど、つい先日、病気のお母さまと二人暮らししているという方からコメントをいただいたんですね。これまで、介護しながら献立を考えて買い物にも行って……というのがすごく苦痛だったけど、私と同じように献立ノートを書くようになってから、日々の買い物や料理がすごくラクになったと……。それを見た時にああ、役に立ててるんだなあ、よかったなあと心の底から感じることができました。

Hana氏が考案中の献立ノート。デザインも素敵で、今後の発表が楽しみになる。

――ノートを買った人たちが投稿していけば、それもまた誰かの役に立つかもしれないですよね。

Hana:そんなふうに、みなさんが繋がってくれたら嬉しいですね。誰かの料理時間にワクワクをプラスできるような、そんなキッチンブランドを私1人ではなく、視聴者のみなさんと作り上げていくことができればと思っています。私のフォロワーさんはお料理が好きで、前向きで、毎日を一生懸命楽しもうとしているエネルギーに溢れた方々ばかりなんです。そんなみなさんと私の力を合わせたら、本当に素敵なアイテムがたくさんできると思っています。これからも、温かく、元気なコミュニティーを築いてきたいです。

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