京アニ“志を繋ぐ碑”、 ファン行動にSNSでは議論紛糾ーー現地取材で感じたそれぞれの思い
■イラストと写真撮影はあり? なし?
“志を繋ぐ碑”の前で、自作のイラストやグッズの写真を撮るのはありか、なしか―― そんな意見が、X上で交わされている。
志を繋ぐ碑とは、2019年に発生し、36名が亡くなった京都アニメーション放火事件を後世に伝えるために、京都府宇治市の京阪宇治駅そばにある「お茶と宇治のまち歴史公園」に建立された碑である。2024年7月18日に事件から5年の節目を迎えることを前に、7月14日に設置された。
宇治は京アニ作品『響け!ユーフォニアム』シリーズの舞台となっており、京アニの本社も置かれている。そうした縁もあって、設置後には多くのファンが訪れている。そんななか、この碑の前に自作のイラストを置いて写真を撮影し、X上にUPしているファンがいた。この行為を巡り、一部のファンの間で様々な意見が交わされているというわけだ。
■慰霊碑とは違う志を繋ぐ碑
誤解している人も少なくないが、志を繋ぐ碑は、慰霊碑ではない。宇治市の公式サイトによると、「本事件に関わったすべての人びとの志を繋ぎ、長く記憶に留める象徴として設置するもの」なのだという。そのため、受け止め方は人それぞれであり、なかには「訪れても写真撮影はしない」「訪れたことをXに書こうとは思わない」という人もいるようだ。
公式サイトでは、「被害に遭われたご家族、京都アニメーション、彼らを応援される方々により、本事件と本事件で遭難した故人らの存在、世界中から寄せられた祈りと支援、それらに対する感謝や願いなど、本事件に関わったすべての人々の志を繋ぎ、長く記憶に留める象徴として、制作されました」と解説されている。
また、「献花やお供えはご遠慮いただきますようお願いいたします」と呼びかけられているものの、イラストやグッズを置いて撮影してはいけないとは書かれていない。したがって、あくまでも訪れる人の自主的な判断に委ねられているわけだが、イラストやグッズを置いて撮影することがそんなに問題なのだろうか。
■訪れる人の判断に任せるべき
筆者は、そのイラストを見てみたが、京アニに対する強い思いやリスペクトの精神が感じられ、胸が熱くなった。碑のコンセプトにも合っているように思う。もちろん感じ方は人それぞれだと思うのだが、少なくともスプレーで落書きをしたり、破壊したりするわけではないのだから、問題行動とは思えない。
筆者は、17~19日の3日間に「お茶と宇治のまち歴史公園」に通って取材を行った。極めて少数であるが、碑の前で京アニ作品のアクスタを撮影する人や、碑と一緒に自身の写真を撮る人もいた。しかし、迷惑行為には感じられなかったし、誰もがそれぞれの想いを抱きながら、この地を訪れていることを実感した。
もちろん、大量のフィギュアやぬいぐるみを持ち込んで撮影するのはどうかと思うし、碑の上に重いものを置けば破損させてしまう恐れがある。しかし、正面にアクスタや少量のグッズを並べて撮影するくらいなら、問題はないのではないかと考える。
がんじがらめにルールで縛ってしまっては、かえって訪れる人が少なくなり、志が繋がれなくなってしまう気がする。あくまでも訪れる人の自己判断に任せるべきではないかと思うのだが、どうだろうか。
【写真】『響け!ユーフォニアム』ホテルの人気コラボルームやビジュアルカード