営業利益6割強も……「民放テレビ局」決算で見えた“アニメ頼み”の収益構造 専門家に聞く現状と見通し

■日本のアニメとテレビ局の蜜月関係

photo:thom milko(unsplash)

 劇場公開作品の上位を占めるなど、近年とみに存在感が増している日本のアニメ産業。「マニアが見るもの」というイメージはすでに過去のものとなっており、アニメは全年代が親しむ娯楽として親しまれている。

  そんな状況を如実に示しているのが、地上波各局のアニメ事業の売り上げだ。日本テレビは3月期の通期決算にてアニメ事業が前年比およそ80%の増加を記録したことを発表。またアニメに強いテレビ局として知られるテレビ東京は、同じく3月期の通期決算でアニメと配信の事業成長を報告。資料には営業利益のうち、およそ67%がアニメ・配信事業で占められているとある。

  広告による放送収入が落ち込む中、民放各局にとってアニメがもたらす収入は貴重なものだ。では、現在の民放とアニメはいかなる状況にあるのか。アニメ作品に関して数多くの取材を行ってきた数土直志氏に、現状のアニメとテレビ局の関係、そして今後の見通しを伺った。

──現状、各局の収入においてアニメ事業が占める部分はどれほどの大きさになっているのでしょうか?

  実際にはとても大きいものであると思うんですが、前提として細かい事業の収益に関しては具体的な数字が出ないこともあるので、テレビ局によるアニメ事業の売り上げというのは全体像が掴みにくいものなんです。それを踏まえた上でいうと、まずテレビ東京はアニメが収益に占める圧倒的に大きいテレビ局なのは間違いありません。

──イメージ通りですね……!

 テレビ東京はいち早くアニメ事業部を作ったり、アニメ担当の役員が経営陣の中にいたりして、アニメというものを自局の主要ビジネスとして早い時期から打ち出していました。それが今しっかりと当たっている。他局はその成功モデルを見て、「アニメというのは放送局と親和性が高くて、ビジネスとして伸び代が大きい」ということに気づいて、現在力を入れている……という状況に思います。

──テレビ東京以外のテレビ局の動きはどうでしょうか?

 TBSなどはさほど事業として大きく取り組んでいる感じはありませんが、他に目立つテレビ局といえば日本テレビですね。本体でやっているアニメ事業もありますし、タツノコプロやマッドハウスといったスタジオも子会社として抱えています。細田守監督作品をマネジメントするスタジオ地図LLPにも出資しているし、アニメ事業には熱心なテレビ局です。

──日本テレビに関しては、直近では『葬送のフリーレン』や『薬屋のひとりごと』といったヒット作もありました。

 『フリーレン』と『薬屋』は大きかったと思います。『フリーレン』に関しては最初からちゃんとヒットを狙って放った作品がしっかり大ヒットしたという例ですね。『薬屋』は思っていた以上に伸びた作品だろうと思います。この2作は、前年の収益に関していえば大きな存在だったはずです。

──ヒット作ということであれば、『鬼滅の刃』といった作品もありました。

 『鬼滅』はもともと集英社とアニプレックスとufotableでやっていた作品ですが、放送に関しては今はフジテレビががっつり噛んでいますね。フジテレビにとっても大きなプロジェクトになっていますが、あれだけの大ヒット作なので損をしたということはないと思います。

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