【ルポ書店危機】地方書店の店長に聞く、町の本屋のリアル 現状から浮かんできた日本社会の縮図
■公共施設は地元の書店から本を買って欲しい
――地方の書店を維持するために、必要なことは何だと思いますか。
阿部:せめて、公共的な図書館や病院、学校などで使う本は、地元の書店で買って欲しいですね。図書館関係の本を、図書館流通センターなどから仕入れている自治体も多いと聞きます。また、学校の教材、学習参考書の「チャート式」なども書店を通さずに直に出版社と取引している例もあります。羽後高校は学校図書や参考書をミケーネから買ってくれています。本の値段はどこで買っても同じなのだから、自治体はせめて地元から仕入れるべきではないでしょうか。
――今後、ミケーネはどうなっていくのでしょう。
阿部:私たち夫婦は、ただ本が好きだというだけで書店を始めました。子どもがここまで減ってしまう、小売業がこんなにやっていけない時代になるとは思わなかったですね。でも、書店がなくなっていく時代だからこそ、私が元気なうちは、細々とでもいいのでなんとか町の本屋を続けていければと思います。ただ、繰り返すようですが、書店だけではやっていけないんですよ。書店の経営に意欲のある人が、当店を引き継いでくれるといいのですが……。
――苦しい中でも書店を続ける阿部店長の原動力は、何なのでしょうか。
阿部:なんだろうね。ミケーネは今やコミュニケーションの場になっている。それが楽しいからかな。本に関係ない来客が毎日10人以上来店し、お茶やコーヒを飲み語り合っていきます。様々な世代の人が来店して、人生相談や移住相談だったり、ビジネスの話だったり、政治の話だったりと、いろんな話をしながらお茶を飲んでいきます。羽後高校の活性化のためにやってきている慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスの生徒もよく来ます。その中から移住者が増えたり、新たな事業が始まったりしています。あらためて考えてみると、書店ミケーネが地域を活性化させる一つの“熱源”になっているという確信が、書店を続ける原動力になっているような気がします。
――書店がコミュニティを形成するのですね。
阿部:うちの女房は、来た人を誰でも歓待するからいいのだと思います。書店を守っていくのは、最終的には“人”なのかもしれませんね。とにかく、私も女房も人と話をするのが好きなんですよ。だから、書店の経営は面白いことは面白いし、熱意が続くうちは店を潰さないようにしたいと思っています。
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【書籍情報】
タイトル:『ルポ書店危機』
著者:山内貴範
発売日:2024年5月2日
※発売日は地域によって異なる場合がございます。
価格:2,420円(税込価格/本体2,200円)
出版社:株式会社blueprint
判型/頁数:四六判ソフトカバー/256頁
ISBN:978-4-909852-50-2
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