哲学と生命科学を繋いだ先駆的存在、ダニエル・デネット死去 “心の進化”の解明に挑む

■哲学と生命科学を繋いだ先駆的存在

『心の進化を解明する――バクテリアからバッハへ』(青土社)

  哲学者、著述家、認知科学者のダニエル・デネットが、4月19日、間質性肺疾患の合併症により死去した。82歳だった。デネットは、心の哲学やその他の幅広い哲学分野での研究で知られ、哲学と生命科学を繋いだ先駆的存在と言われた。また、無神論者でもあり、“新無神論の四騎士”に数えられたほか、世俗主義者としても知られた。

  著書に『心はどこにあるのか』『解明される意識』『ダーウィンの危険な思想』『自由は進化する』『心の進化を解明する ―バクテリアからバッハへ―』などのほか、『ヒトはなぜ笑うのか』などの共著もある。著書の多くは翻訳され、日本でも広く読まれた。

 『心の進化を解明する ―バクテリアからバッハへ―』(木島泰三/訳、青土社/刊)は、現代の科学は心をどこまで解明できるのかという壮大なテーマを掲げ、心がいつはじまり、どのように進化してきたのかを探求する“心の進化”の解明に挑んだ意欲作となった。また、『自由は進化する』(山形浩生/訳、NTT出版/刊)では、哲学上の難問を唯物論・進化論的に説明した。

  デネットは、1942年3月28日、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州ボストン出身。11歳の頃に哲学に関心をもち、1959年にフィリップス・エクセター・アカデミーを卒業。1963年にハーバード大学で哲学の学士号を、1965年にオックスフォード大学で博士号を取得。その後、カリフォルニア大学アーバイン校に勤務したのち、タフツ大学で教鞭を執った。

  デネットはそのキャリアの大半をタフツ大学で過ごし、同大学の認知科学研究センター所長も務めた。また、タフツ大学在学中に、オックスフォード大学、ハーバード大学、ピッツバーグ大学など数多くの大学で客員研究員を務めた。デネットは2001年にジャン・ニコ賞を、2012年にはエラスムス賞を受賞。2004年には、アメリカ人道主義協会が選ぶ年間ヒューマニストに選出されている。

  また、デネットは近年、人工知能やロボットが現実に起こりうるあらゆる問題に対処不可能であることを示すAIのフレーム問題など、AIについても言及していたことでも知られていた。

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