映画『変な家』原作をどう変えた? 佐藤二朗の怪演とマシマシ演出で“誰もが楽しめる”ホラーに

ちょっとやりすぎ……だけど楽しい佐藤二朗の怪演

  映画『変な家』の大筋は、原作とほとんど同じ。その流れは、ミステリーマニアの設計士・栗原さんと共に間取り図の謎を解き明かしていくというもので、難しいことを考えずに楽しめるエンタメ作品となっている。

  しかし物語を映画という表現に置き換えるにあたって、大きく変更されている設定も。まず、映画版では語り手の雨穴が架空の動画クリエイター・雨宮(間宮祥太朗)に変わっており、彼の身にさまざまな危険が襲い掛かっていく。また“安楽椅子探偵”的に間取りの謎を解いていく原作とは違って、映画版では実際に建物に突撃していき、奇妙な出来事を次々と体験することになる。

  なにより印象的なのは、ホラー的な演出が“マシマシ”にされていたことだ。原作はどちらかといえば客観的な叙述で、淡々と物語が進んでいくが、映画版ではあらゆる場面に観客の心を揺さぶろうとする演出が仕込まれており、ホラー映画として成立させようとする制作陣の熱意を感じられた。

  とくにMVP級の活躍を見せていたのが、栗原さんを演じた俳優・佐藤二朗。初登場時の気味が悪いいちごパフェの食事シーンに始まり、どんな時も表情が一切変わらない不気味さ、やけに説得力のある話し方など、ちょっとやりすぎなくらいの怪演技だ。

  原作と比べて演出過剰と感じる人もいるかもしれないが、頭をからっぽにして楽しめるホラー映画として徹底した作りになっていることは間違いないだろう。110分のあいだ、気の抜けない不気味な世界がずっと続くため、お化け屋敷にでも入った気分を味わえるはず。

  実をいえば映画版では謎の根幹に関わる部分が若干原作から変わっているため、ミステリー好きには原作の方がオススメできる。とはいえ、どちらも来るものを拒まないエンタメ作品となっているので、映画から原作に入るという楽しみ方もいいかもしれない。映画業界を騒がせる“変”な物語を、ぜひ体験してみてほしい。

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